寒い季節になってきて、朝がつらい。
やっと外気にさらされる事のない建物のなかに入り込めたと思ったら、なんだかそこには落ち葉が。
たくさんではないが点々。
それが階段でも見られ、最終的にある部屋へと続いていた。
風も雨もあったから、誰かの靴にでも付いてきたのだろう。
しかし、これを「完全にたぬきのスパイが侵入している」と考えていくとちょっとおもしろい。
一枚だけ拾った落ち葉を眺めながら考えていた。
人間の建物の奥の部屋まで来られるという事は、確実にそのたぬきは化けている。
でも、その術の何らかの副作用で、歩くたびに落ち葉が落ちてしまうのだ。
そのリスクを考えると、長い間はいられまい。
早足で建物から去る者がたぬきのスパイだ。
たぶん尻にしっぽも残っているだろう。
あるいは、斥候のようなやつが先に侵入。
自分の侵入経路を次の侵入者に伝えるべく、落ち葉を落としていったのだ。
木の葉舞うこの季節を侵入時期に選んだ事を考えると、策士である。
そして入り口でたむろするやつらが本隊か。
恰幅もいい。
いや、もしかしたら術の有効時間が決まっていて、タイムリミットがせまったときにすぐ再術を施すために必要な落ち葉を手に入れるため、前もって要所要所に落ち葉を置いたのだとも考えられる。
おそらく額に落ち葉をあてると、再術が可能になるのだろう。
それなら、ずっと落ち葉を見ていようか。
なにげなくそれに近づいたり、手に持ったりするやつが、タイムリミット間近のやつだ。
俺だ。