勘違いローテーション

僕はずっとAKB48の「ヘビーローテーション」という曲を「ヘビーローテーション」だとは思っていなかった。
ぷっちょの曲だと思っていた。
正直、「ぷっちょ」という曲名だとすら思っていた。
一方、iTunes Storeの上位にある「ヘビーローテーション」という曲があるのも知っていた。
だが聴く機会がなく、同じものだとは知らないままだったのである。
書くまでもないが「ヘビーローテーション」を聴いた日は、僕がそれまでの人生で一番「ぷっちょ」と口にした日になった。
僕は「ぷっちょ」の商品コンセプトがあまり好きではない。
おそらく白地の部分は乳性の味が、なかに果物味のグミが入っているものと推測しているが、個人的にフレッシュな果物となめらかな乳性のものが混ざってはお互いのいいところを殺してしまうのではないかと考えているから。
したがって、僕はそれまで「ぷっちょ」を口にしていなかったし、そういった意味でも口にしていなかった。
そんな僕が一番「ぷっちょ」と口にした日。
それが「ヘビーローテーション」を聴いた日だったのだ。
このような勘違いは往々にしてあるものである。
僕はずっと「ふくろはぎ」だと思っていた。
自分に備わっているあれは、ふくろはぎである、と。
けど、本当は「ふくらはぎ」だそうじゃないですか。
以前に書いたが、「キンカジュウ」というほ乳類を「機関銃」と思っていたりもした。
最初。
最初だ、重要なのは。
誰かが悪意を持って幼少の僕に「ふくろはぎ」を教えたか、あるいはその人も勘違いしていたか。
勘違いの原因たりえるものが最初にきてしまうと、もはや防ぎようがない。
その勘違いはあるタイミングまで確固たる知識として存在し続けるだろう。
しかしある段階で「それ、ふくろじゃなくてふくらだよ」が判明してしまうわけで、それはすこぶる恥ずかしい。
勘違いの原因。
もちろんさきほど挙げたものに加え、より有力な候補なのは、聞き間違えだ。
以前、ある曲を聴いていて、要所要所に「ポメラニアン」という歌詞が出てきたことに疑問を覚えた事がある。
何の事かともやもやしつつも日々をポメラニアン事情以外のことに費やしていた。
そしてあるとき、ぱっと理解できた。
あれは「ほめられた」と言っているのだ、と。
どう転がっても、この手のことは誰しも経験していることだ。
回避はできない。
回避するとなると、AKB48は「あれはぷっちょという曲でした」と会見し、人体に関する学術書では、記述があるとすれば「ふくろはぎ(ふくらではない)」と修正、ほ乳類の項のもくじに「機関銃」と書かねばならない。
そして歌手は「歌詞の前後を無視してポメラニアンと叫びたくなったのだ」と虚偽の吐露を行うのである。
こんな回避の方法を模索するなら、真摯に恥を受け入れよう。
さもないと。
例えば空耳アワーで「ちんこすごい」と聞こえるジャングルブックの曲があった。
この歌手に「日本語でちんこすごいって聞こえるんだって?。残念だな、実は本当にそう歌っているのさ」と言わせる事になる。
もうしわけなさすぎる。

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