校庭に引かれた白線が、こんなにも夏の空に映えるものとは思わなかった。
今日は年に一度の競技大会。
この日のために誰一人サボることなく練習が続けられたんだ。
我が校の競技大会では、種目はひとつ。
「クラスたいこうリレー」だ。
朝10時。
校長先生の話が終わり、ついに大会が始まった。
1レーンは1組の荻原。こいつはスタートダッシュがすごいと聞く。
2レーンは2組の山平。カモシカのような足をした女の子だ。
3レーンは3組。うちのクラスだ。走者の三田はユニークさが売りだ。
4レーンは父母チーム。誰かのお父さんのようだ。
「では、位置について。」
小山先生がピストルを構える。
「よーい!!」
軽い破裂音の中、ついにレースがスタートした。
まずは1レーンの萩原がひっくり返り、背中を地面にこすり始めた。
さすがだ。
2レーンの山平は座り込み、盛んに「おべべ」と言っている。
常套手段だ。
三田は砂を手に取り、口に入れようとし始めた。
何でも口に入れるのは小さい子にはあるそうなのだが、なかなかできない事をするのはさすがだ。
どこかのお父さんもがんばっている。砂で山を作り始めていた。
「クラス退行リレー」は、いかに幼児っぽく保護者(先生、一般公募)の心をくすぐることができるかが焦点となった競技だ。
序盤は、三田の活躍が光った。
多くの保護者が彼のところに集まり、「ぺッ、しなさい。」と言っている。
自分が許す限り退行し続け、ポイントを獲得できるこの競技では、彼のように要点を抑えつつ長時間一線で戦える人材は貴重だ。
1組も順調にポイントを稼いでいるようだ。
悲惨なのは2組と父母チームだった。
2組の周りは「おべべって何だろう・・・。」という、競技どころではない問題が発生してしまっていた。
父母チームは恥ずかしさのあまり微動だにできなくなったお父さんがいた。
誰かが囁いた「即身仏」という言葉と年齢相応の顔つきにより、とりあえず退行からは一番離れたところにいるのは明白だった。
序盤はほぼ横並びだった1組と3組だが、中盤でうちのクラスの山野がミスを犯してしまった。
ほどけた靴紐をすばやく結んでしまったのだ。
それを見ていた1組の走者は、うまく靴紐をほどいた後、駄々をこねた。
山野の綺麗に整った蝶々結びを見たクラスの誰かが、僕の出番が近づいたことを知らせてくれた。
僕は、校内の階段に座り、歓声だけを聞いていた。
この様子だと、保護者全員に親心を抱かせなくてはならないだろう。
動きだけで人の心を掴むことは難しいことだ。
でも。
僕は立ち上がった。
僕の頬が、斜陽で赤く照らされた。
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「ぽんぽん」とか、
「まんま」とか、
「おぶちゃん」とか、
「nimbus7942」とか、
今考えると何語やねんって感じよね~。
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赤ちゃん語やないか。
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うんこ、ちんちんデ笑えたあの気持ちを返して!