狭義として、乾いたぞうきんで床を拭くこと。
学校での掃除の時間、たいていは濡れたぞうきんで床を拭いていた。
生徒が横に並んで、いっせいに。
濡れたぞうきんで床を拭くと、その表面はほのかに湿り、うわばきの底に心地よい抵抗が生まれる。
その上で足を止めるとき、「きゅっ」といった具合にぴたりと止まる。
このとき、床の上のほこりは完全に取り払われ、掃除がうまくいったことを実感していた。
しかし、掃除は時として「からぶき」で行われる。
不満だった。
からぶきなんかで、ほこりが取れるものか。
床の上の汚れは、みずぶきなら水分が汚れを溶かしだし、拭き取れるだろうが、からぶきだと、単に汚れを広範囲に広げるだけなのではないか。
この不満は、からぶきもみずぶきもしなくなったせいか、ずっと変化することなく続いていた。
だが最近、からぶきもいいのではないかと思うようになった。
からぶきのよい点は、拭いたあと、からっとしていること。
拭いたあとに、拭く対象となった汚れが全くなくなったような印象を与える点にある。
当たり前だが、それがよいことと思えるようになったのは、つい最近。
逆をいうと、みずぶきで拭いたあとの湿り気が、ちょっとだめなシーンもあることに気づいた。
昔から、からぶきとみずぶきは、ちゃんとすみわけできていたのだ。
しょうゆをからぶきすれば、そこにはもうしょうゆはない。
評価:★★★★★