両手いっぱいの星

庭に植えてあるきゅうりか何かの葉に、テントウムシが引っ付いているのを見つけた。
それは確かジュウニヤホシテントウ。
アブラムシをばくばく食べるお仲間のテントウムシとは違い、こいつらは葉っぱを食う。
いわゆる害虫枠の昆虫である。
幼少期、僕はこれを両手いっぱいに集めて遊んでいた。
映画「となりのトトロ」では、メイちゃんがすすわたりというやつを捕まえ「とった!!」と叫ぶシーンがある。
映画を見た方ならわかると思うが、あれはすすわたり的には「とった!!」ではなく「殺った!!」である。
要は、明らかにつぶしている感じ。
僕はジュウニヤホシテントウを両手いっぱいに集めた。
しかしそれは、殺るためではなかった。
なんとなく、植えてある野菜なんかに悪さをするんだという認識はあったが、ただ単にたくさんテントウムシを集めることが、生きる上での重要項目上位だっただけなのである。
僕は手頃な保母さんに手の中を見せて微妙な表情を獲得したのち、満足げにテントウムシを放っただろう。
今は無理だ。
テントウムシを両手いっぱいに持つことなんて。
手のひらが黄色い汁に侵されるなんて。
現状、生きる上での重要項目上位に「テントウムシを両手いっぱいに持つ」はないのである。
そして、それほど勢力拡大していないこの虫をどうこうする項目もない。
我が家のジュウニヤホシテントウは今のところ、安泰である。

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