なにやら「ロックバー」なるものが出現。
明かりのともったその店を、のぞき見したくなる。
僕は今のところ「ロックな生き方」はしていない、と思う。
そもそも「ロック」なるものをちゃんと把握しているかどうかもあやしく、さらには音楽全体のカテゴリわけが把握できるものなのかもよくわからない。
ゆえに、ロックらしき何かの、過剰過ぎるイメージばかりが印象にあるのかもしれない。
それにしてもその店から「無印商品で無難なものをそろえました」みたいな服装の人が出てきたときは、ちょっとだけ驚いた。
偏見なのだろうが、やはり革ジャンがよかった。
ひどく人の良さそうな顔だ。
これはどうすることもできないのかもしれないが「人の良さそうなロック」というものは想像しにくい。
「髪型に興味を持った幼児に、セットしたての髪を触らせてあげる」
これはロックじゃない。
お父さんだ。
いや、そういうことじゃないのだろう。
「いつもはいい人だが、金曜夜はロック」
いや、そうですらない。
「いつもはいい人で、金曜夜はロック」
このくらいだろう。
いいこととロックは相反しないのだ。
人の良さそうな彼がケータイを取り出す。
もちろん折らず、普段の会話だ。
彼はお酒を飲んでいるだろうから、それを踏まえて、大型アンプを仕込んでいないタクシーか何かで帰るのだろう。