チョコ稜線

冷蔵庫にあった私のエクレアがなくなった。
お母さん、私のエクレアたべた?
「え、食べてないわよ」
トモキが帰ってきた。
トモ、私のエクレアたべた?
「え、食べてないよ」
こういった問題でも、わが家ではちゃんと解決するという決まりがあるので、父親が帰ってきたのと同時に家族会議が始まった。
「俺?。俺は今帰ってきたんだからなぁ」
うーん。解決しないね。
「どうかしら。誰が一番エクレアを欲しているかを考えてみたら」
えー。
うーん。
まずお母さんは、袋に残ったエクレアからはみ出したクリームを搾り出すのが好きでしょ。
トモは、上にかかっているチョコレートの口溶けの具合を考えながらエクレアを温めるのが好きだし。
お父さんは、いつも口の周りにチョコとクリームが付きまくってるし。
今もそうだし。
うーん。エクレアだけに注目したんじゃ、解決しないね。
「じゃあ、エクレアの範囲を少し広くしてみたら?」
えー。
うーん。
まずお母さんは、ものを食べるために生きてるって感じだし。
トモは、いつも反芻してるし。
お父さんは、いつも口の周りにチョコとクリームが、今も付きまくってるし。
うーん。解決しないね。
「おねえちゃん食べたんじゃない?」
えー。私?。
「昨日、エクレア食べちゃったぞなもし、って言ってなかったっけ?」
えー、私、そんなに古風かなぁ。
「俺も昨日聞いたぞ。おまえが、エクレアぞなもし、って言うのを」
ちょっと。
それが本当ならエクレアどころじゃないわ。
多分聞き違い。
とにかく、今はエクレア!。
「仕方ない。すごくエクレアの範囲を広げてみよう」
えー。
うーん。
まず、お、おかあ、さ・・・・・・
「おねえちゃん、起きないね」
「ああ、すまないことをした」
「ええ」
「???」
「カナは、あまりにエクレアの範囲を広げすぎてしまったために、迷子になってしまったのだ」
「えー。今、どこにいるの?」
「いつかは帰ってこられるだろうが。どこにいるかはわからない。」
「エクレアの延長線上にいることは確かだと思うんだけど・・・」

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