エスカレーターのあたりをうろうろしているハエがいる。
どうやら、ベルトに止まろうとしているようなのだが、それは動いているため、踏ん切りがつかないようだ。
それでも、ついには止まることに成功し、ベルトとともに上がっていった。
「ふははは。馬鹿なハエめ!!。おまえ、止まっていると思っているだろうが、実は上に動いているぞ。」
と思いきや、すぐに気付く。
同じくエスカレーターに乗っていた俺も、止まっているが上に動いている。
そうか。
止まっているのに、上に移動しちゃっているのか。
「見てあのひと。立ち止まってるのに、上がっていっちゃっているよ。」
「ちゃんと、上がっていっちゃっていること、気付いているかしら。」
ハエはいつの間にか、飛んでいってしまっていた。