資格を奪われたら人間、何もできないのではないか。
間違えた。
視覚を奪われたら。
ということで数年前からある、目につけるやつ。
仮想現実とそれを実現しているVR機器というのはほぼ、視覚表現に特化している、と勝手に思っている。
となると気になるのは他の感覚で、では「海の映像をVR機器で見るとき、潮の香りもする」というのはどこまで行けるものなのだろうか。
この場合、聴覚はかなり簡単に実現できそうだ。
「波の音がする」
残りの3つは難しそうで、上記の香りに加え、波に触れた時の感触や吐き出したくなる塩っ気。
こう考えると五感を満たすVR機器は大変そうだ。
でも気になっているのは、実はこれらではなく「逆VRはどうだろう」ということだ。
即ち、どんな映像を見ていてもいいが、現実に風が吹いたらVR機器で表示している映像に風が吹く演出が加わる。
西部劇で見る、こんがらがった木の根っこみたいなやつが転がっていく。
そんな仮想現実は可能なのだろうか。
なんていうことはもう古そうで、例えばポケモンGOでは雨が降っていると映像でも降っていた気がする(違ったらごめん)。
例によって五感は偏るかもしれないが、実現可能かどうかというよりは、もう使い方どうするか、という段階な気がする、逆VRは。
ただ、結果的に逆VRはすぐ2つの到達点をむかえる気がしており、それは「エロ」と「広告」ではないか。
エロはおそらく二次元の何かとの接点や、映像は別の人などという仮想不倫などの話に終始するだろう。
広告は、もうあるだろう。
例えば、VR機器を通した映像にあるものを、そのままネットショップで買えたり、詳細がわかるような導線のようなものなどが。
と、ここまで来てやっと一番言いたいことが言える。
どうか、カレーのにおいがしたときに、勝手にハウス食品の広告を表示しないでもらいたいのである。
別にカレーが嫌いとか、滅ハウス食品というわけではないのだが、なんか恥ずかしいのだ。
カレーのにおいがした時点で、もうハウスだかSBだか、頭には浮かぶのである。
そこにきてメーカーのCMなんか、何の念押しなんだと思ってしまう。
そして近くを通り過ぎる人はこう思うのだ。
「あの人、カレーのにおいしてるからハウス食品のCMが流れているな」
どこか「あの人、前に女子高生が歩いているからエロいこと考えてるな」と似て、何か人にばれたくないことのような気がする。
そして、情報の拡張、連携は時としてよくない結果を生み出す可能性もある。
上記のようなシンプルな「カレーのにおいだけでなく、そのメーカーの情報も伝わる」ことであっても、どうだ。
その時、前に女子高生が歩いていたら。
逆VR以前。
「カレーのにおい」だけの時においての、「前を歩く女子高生」では、情報の連携は以下のパターンがあるだろう。
「カレーのにおい→女子高生を連想」
「カレーのにおい→エロいことを連想」
「女子高生を見かける→カレー食べたい」
「エロい気分→カレー食べたい」
一方、カレーのにおいに付いてメーカー情報も手に入ってしまうと、情報の連携が複雑化する。
面倒なので列挙はしないが、上記の例に加え、「女子高生を見かけるとハウス食品のことを思い出す」「ハウス食品で欲情する」など、「ハウス食品のことを考える→カレー食べたい」の健全な連携も霞むほどのとんだクリーチャーが生み出される可能性があるのだ。
こんなん、街歩くだけでどれほど「琴線に触れる」ものか、わかったものではない。
まあ、どうであれ「あの人、カレーのにおいしてるから欲情しているな」と思われるのは、是非もさることながらそもそも、ちょっと赤裸々すぎる。