にんじんというと、僕にとっては小説でも米菓子でも田原俊彦でもなく、「なんか子供の頃は嫌いだったけど、今は食べてる」という印象。
なぜ子供の頃嫌いだったか。
「大人になったときにちゃんとにんじんの嫌いなところを思い出せるようにしておこう」と考えていなかったため、あくまで推測になってしまうが、たぶんちょっと甘い。
にんじんは煮ると少し甘くなる。
あれがいやだった気がする。
野菜のくせに、なぜ甘くなるんだ。
幼少の頃の僕はそれが許せなかった。
だから僕は、にんじんを料理の中から除外したり、寒空の下吊して放っておいたりは、まあしなかったが、よくその衝動を抑える事ができたと感心する。
寒空の下吊して放っておくとむしろ甘みが増したりするような気もするから、賢明でもあった。
ところが今では案外おいしいと思っている。
火が通っていても野菜スティックでもおいしい。
あんなに憎んでいたのに。
僕も甘くなったものである。