調べてみたが、布状のイスラム帽が見つからない。
しかし今回の僕はしつこかった。
自分でも感心するほどの調べにより、何なら西荻窪のアラビアンな雑貨を売っている店があることを突き止めたのだ。
ここを知るには多大な犠牲を払ったのだ。
多少の電気料金、睡眠時間。
イスラム帽があってもらわなくては困る。
だがなかった。
きらびやかな雑貨はあったが、イスラム帽はなかった。
しかも店の奥から出てきた店員さんが笑顔だ。
用事のないお店の店員さんがやさしいのは、もう申し訳なさすぎて心が苦しいのである。
すまない異国の店員さんよ。
あなたが僕の求めるイスラム帽をかぶっていてくれたら、「それほしいんだ」と言えるのだが。
僕には彼にイスラム帽を示す手段も思いつかず、店をあとにした。
夏は夜。
夏のいいときにはまだ時間があるので、このまま吉祥寺まで歩く事にする。
そちら方面の商店街を歩いていくと、面白い店があった。
何やら奇妙な形の鞄やオブジェが並んでいる。
それは主に虫をかたどったもので、男の子にはうれしいねえ。
よくできていたので店内をうろついてみると、帽子が売っている。
それは僕の求める帽子ではなかった。
布状ではなく毛糸。
しかも何やらもこものの装飾。
それでもツバのない、かといってニット帽ほど深くもない。
イスラム帽と呼べなくもない帽子。
買ってしまった。
その帽子は全然悪くはないのだが、なんとなく傷心の購入。
センスのいいお店の紙袋が夕陽に照らされた。
布状のイスラム帽探し。
イスラム圏のゲームなら「旅立ちの村」で50Gくらいで売っていそうなのに。
ともかく今回の散策を顧みる限りは、それはどうもライフワークにもなりそうな雰囲気なのである。