【あらすじ】
台湾旅行。
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マッサージ店にて。
結果的に、僕は2時間ほど、もまれることになった。
体中を若い女性に、いかがわしいところ以外はもれなくもまれてしまった。
やはり手練なのだろう。
確かに気持ちよく、半分は寝てしまったくらい。
しかし、2点気になる事ができた。
ひとつは、マッサージとしてどうだったのかがわからない点。
もっと気持ちいいレベルが標準かも知れないし、今回のが最高位に位置するものなのかも知れない。
半分寝てしまったというくらいだから正解ではあるのだろうけど。
そして2点目。
せわしなかった。
寝転がって、ももをとんとんされたり二の腕をもまれたりしている間、うとうとしかけると「同時に顔の皮脂取ります」「かかとをすります」と来るのだ。
もちろんこれは、僕は適当なアクセサリを付けたことにも原因がある。
事実、上記のものは僕が頼んだものなのだ。
ただ、それ以外にも「爪切りいかがですか」「顔パックいかがですか」と列車の車内販売のようにいろんな人がものを売りにくる。
そんなとき、僕は顔の皮脂を何らかの方法で取られつつ、かかとをすられつつ、もまれつつで、完全に紙粘土細工最後の仕上げみたいなことになっている。
そんなところに技術を売りにこられても、もう僕の周りはピットレーンのようになっていてどうにもできない。
僕はなされるがままに「あなた、あまり毛穴に皮脂なかったよ」と言われて何の抑揚もなく、「こんなにかかとのかさかさ取れたよ」と白い粉末をとろりとした目で眺め、緊張のために強ばる事が唯一の意義だった筋肉を「きんちょしてる?」と言われながらもまれ。
ともかくそんな感じでマッサージは終わった。
気持ちよかったのだが、それよりも印象に残ったのは顔の皮脂を取る時、取った皮脂を僕の額に置いた紙になすり付けることが、何となく夏目漱石の鼻毛の事を思い出させるのに十分なことだった。
清算の前に再度待合室に通されると、知った顔が幾人かいる。
どうやらみんなで来たようで、何なら僕も単独行動などせず、彼らに付いていけばよかったか。
いや、それでは味わえなかったかもしれない。
こんな、ショッカーの改造人間が改造されて初めて世間に触れたような。
活け造りのアジのような気分は。