【あらすじ】
台湾旅行。
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自強というものに属するらしい我が乗車列車は、下剤を飲んだかのように整然と進み、停車するそぶりすら見せぬ。
そもそも駅の間隔も広いらしく、やっと次の駅が見えたと思ったらそのときはもちろん減速しておらず、もはや停車は夢のまた夢といった面持ち。い
不安もどこかへ置き去りになってしまい、僕は世界の車窓の窓枠にひじをついて、ただ風景を眺めるだけの備品になってしまった。
備品なりに外を観察していると、色々分かってきた。
駅周辺は結構栄えているようなところでも、その駅間は広大な田んぼが広がり、川が堂々と流れる。
緑色が支配する。
そんなパターンだ。
駅近くになると、ぱっと風景は建物の灰色が占める。
駅前には大きな看板があり、ある駅のそれはウォシュレットに向かっておじいさんが手を合わせている絵。
どうしたのだろうか。
そんなターンを数回繰り返していく。
全然停まらない。
駅間の大半を占める緑ゾーンでは貯水池だろうか。
大小の水たまりが転々とあり、たいがいそこにはサギのような白くて細い鳥がひょいひょい歩いている。
大きな河川の両岸には広場があり、草野球をしている。
隣の人が徐にあくびをする。
あくびにも外国語はない。
停車しない以外は、のどかな土曜日である。