なぜか台北 その28

【あらすじ】
台湾旅行。
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とにかく「自強」というものらしい列車は長い地下運行を抜け、順調に「樹林」を通過した。
よくわからないが、とにかく目的地だった「樹林駅」を通過した、こいつは。
どういうことなのだろう。
2012年6月9日、午前8時4分。
自強電車先頭車両内に、主に僕に戦慄が走る。
落ち着いて整理してみる。
まず、僕は「樹林」までのキップしかかっていないから、だめである。
切符に書かれた「43元」では、この乗り物から降車できないばかりか、不正に乗車している状態だろう。
そして、この列車はどこで停まるのか、分からない。
事実、この時点ではまだ一駅にも停車していないのだ、こいつは。
しかもそんなテンパっている僕に、更なる衝撃が走る。
若い女性が僕の前に座っていたおじさんに何か話しかける。
するとおじさんはしぶしぶ。
少なくとも僕にはしぶしぶに見えたのだが、席をどいたのである。
この列車、座席指定の可能性浮上の瞬間である。
僕は焦りつつも前傾姿勢を保ち、誰かが声をかけてきたら満面の笑顔とともに颯爽と立ち去る準備を行った。
笑顔にも外国語はないだろう。
重要である。
そしてコトの整理。
えーとまず、樹林には停まらなかったぞ・・・。
とはいえ、整理する事はもうあまりないことに気づいた。
停まらぬのなら、もう仕方ないのである。
次に停まった駅で清算をすればよい。
清算を台湾でどうやるかは全く分からないが、清算という行為のことは知っている。
僕は不倫専門だったから、お手の物だ。
ごめんここ自暴自棄。
ただ、今考えた割には「不倫専門」というのは面白い。
「不倫専門で、結果何なんだ」
僕が今何か答えるとしたら、「不倫専門の熱海」とかになるだろうか。
とにかく僕はもうすっかり覚悟を決め、座席指定疑惑は残れど平然と座り続ける事にした。
そうして、僕はもうすっかりまわりと同じいろになってしまふのでした。

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