【あらすじ】
台湾旅行。
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松山駅にて、切符を買うのが分からない。
混んでいないのが幸いなのだが、それでも長い間、券売機の前で固まるのもいやだ。
あまり観光客、ジャパニーズ風を出すのもいやだ。
できたばかりらしい松山駅のぴかぴかな壁面に、狼狽した僕の顔が映る。
腰に手を当てるふりをして、脇を乾かす。
一旦券売機から離れ、まずどんな路線があり、どういう駅が点在するのかを確認する事にした。
ここ、松山の次は台北らしい。
どうやら一駅分くらい、2時間弱かけて歩いていたようだ。
なんとなくそれが目についたので、ここは松山駅から台北方向に行くことにする。
その先をみると「板橋駅」。
今の状況ではもう声すらかけたくなるくらいの親しみのある漢字もあったりする。
しかしわざわざ台湾の板橋に行く事もなかろう。
そこからまた少し進むと「樹林」という駅があるようだ。
これは何だか良さそうだ。
僕は生き物系が好きなので、何となく自然の豊かそうな、田んぼのありそうな。
そんなこの駅に親しみを覚えた。
「樹林」に行ってみる事にする。
田んぼがあれば、水生昆虫を探せるかも知れない。
ただ、樹林は路線図を見る限り、数駅程度しか離れていない。
我ながら保守的、冒険心がないなと思うが、一方でパスポート期限が切迫している、らしいこともある。
電車で3ヶ月と3日かかる場所へは行けないだろうが、とにかくすぐ戻って来れること。
そして自然を優先した形なのだ。
もし、電車で3ヶ月と3日かかる場所なのだというのなら、僕はここにパスポートを置いていくね。