なぜか台北 その46

【あらすじ】
台湾旅行。
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今回、あるいは本ブログでも上位に入りそうなピンクのしおり、「台湾のマッサージを受けてみる」という一大イベントを決行するべく、僕はタクシーに乗る事にした。
ホテルの入り口には絶えず数台のタクシーがおり、それは夜半を過ぎても変わらない。
乗車賃も高くはないため、ちょっと乗ってしまおうかという気にさせる、よいタクシーである。
ロビーに人は少なく、今は午後八時だからごはんでも食べているのかと思っていると知った顔が数人。
どうやらバス乗務員の黄さんと知り合いの数人であるようだ。
僕は彼らに、ついに筋肉の貞操を捧げる事にしたことを伝え、一方で彼らが黄さんと一緒にどこか夜市へ遊びに行くということを聞いた。
明日は帰る日だというのに、お互い血気盛んな事である。
僕は、今日北竹という場所をうろうろしてきたことを伝えた。
黄さんは驚いた顔をし、何しに行ったのと僕に聞く。
僕は正直に、降りようとしていた駅を電車が通過してしまったのだと伝えると、電車の乗り方とかは私に聞けばよかったのにと言う。
もちろんその通りだと思うが、一方でそれを話した時、僕が「樹林」に行きたい理由を言わねばならないような気がした。
それがただ「田んぼや自然がありそうだから」だということがわかったとき、黄さんはどんな顔をするだろう。
ではこれから、僕はマッサージをやってきてみるよ。
別れ際に僕は今回の旅の唯一の目的。
変な帽子(サムネイル参照)の購入について、台湾で今僕がかぶっているような帽子の売っている場所、着用している民族はいないのかと尋ねてみた。
黄さんは、僕が今まで見た事ないようなしかめっ面で、首を横に振った。
そうそう、たぶんそんな顔。

なぜか台北 その45

【あらすじ】
台湾旅行。
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膿んではじけそうなくらい膨れた状態の腹を抱えてシャワーを浴びたあと、なにげなしにテレビを付けるとNHKだろうか。
日本語でどこかの野球のゲームがサヨナラゲームである事を告げた。
誰かが、そのチームで今年サヨナラゲームがなかったことを数えていなければ分からない事である。
観客席で「サヨナラゲームじゃない」欄にチェックを入れる誰かを想像しながら、もう少しも動かまいぞとベッドにボディプレスを仕掛ける。
肉まんもシャーピンも結局余ってしまい、それらはただ冷えるのも待つのみの身で申し訳ない。
そして気づくともう午後7時を回っている。
寝てしまったようで、肉まんもシャーピンも「まだあたたかい」とは言えない状態。
それでも少し口に含むと、なんだかもう少し何かないかなとイベントを考えるようになってきた。
お腹は一杯なので屋台街をうろつく気分には到底ならない。
しかし暇だ。
僕は前日のマッサージのことを思い出した。
あの、いかがわしくないことを懸命に黄さんが言ってくれていた店である。
「今なら疲れているから、もまれる状態の体であるかも知れない」
その時もらったパンフレットを見てみると、店のオーナーらしき女性が日本の有名芸能人と写った写真がある。
もう少し詳しく言うと志村けんなのだが、ともかく「志村けん御用達っス」と言いたいらしい。
異国で見かける志村けんは、もう日本人にとっては早朝のみそ汁のようなもので、心のガードなぞ簡単に瓦解させる力がある。
そして暇でもあるから、これは行かない理由のほうが見当たらない。
気づくと僕はそこに電話をしていたんだ。

なぜか台北 その44

【あらすじ】
台湾旅行。
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ホテルに戻ってきた僕はシャワーのありがたさをさらに高めるため、わざと入らずに食事を取る事にした。
ホテル付近には屋台街みたいなものがある。
そこに繰り出す事にしたのだ。
長時間の徒歩と日照りまみれの体は言う事をきかず、もうここは横になるのが最善ではないかとベッドへと向かおうとするがそれを抑え、外に出る。
早朝に見た屋台街は、午後4時と中途はんぱげな時間にも関わらず小物を売ってくれており、そのどれもがおいしそうだ。
多いのが小さい肉まんのようなもので、何が入っているかはよくわからないがマズイはずはない。
1個でよかったのになぜか5個入っていたそれとシャーピンを購入した。
シャーピンというのは肉まんをひしゃげさせて焼いた。
そんな感じの食べ物で、非常にうまい。
実は近所にこれを売るところがあり、なじみがある。
台湾のそれは日本のと比べてどうだろう。
そんな興味も生じさせる。
ただ、僕の知っているシャーピンよりも台湾のここのは薄くて大きく、具材もネギくらいのようだ。
そして辛い何かを付けるらしい。
お店の人は、僕がシャーピンに何を付けるのかと問われたときの「特に何の付けなくていいよ」に驚き、もしかしてあなた日本人?と聞く。
そうだというと、これはたいがい何か付けて食べるものだからと教えてくれ、控えめに辛い何かを勧めてくれた。
それは見るからに辛そうで、いやちょっと辛いものは苦手で、と身振りそぶりでどうにか分かってもらえた。
そうなの。
苦手なら仕方ないわよね。
あはは。
うふふ。
4分割されたシャーピンを挟んでの、心あたたまるワンシーンである。
僕は辛いものを付けてもらわなくても、心あたたまったよ。
これ、どう?。
それにしてもこの段階でだいぶ買った。
肉まん、結果的には青菜のみが入っていて肉がないまんだったのだが、それをひとつほおばりながらも、ついつい鶏肉入りのラーメンを提供するチェーン店に入ってしまった。
なんか麺を食べたかった。
肉まんもどきとシャーピンでほかほかする鞄をさげて、僕はそこで排骨ラーメンを食べる事になる。
接客のおばさんは僕がつたなくヌードルだとかなんだとかを言うのをちゃんと聞いてくれた。
僕が麺とからっからに揚がった鳥の唐揚げが別々に出てきた事に驚くのをみて満足そうだった。
麺はスープもそれもおいしく、唐揚げも揚げたてでうまかった。
しかし、鞄の中のことを思い出し、憂鬱にもなった。
確実に食いきれる量ではない。
おばさんにほかほかの鞄を触らせたらどうなっていただろう。
ちゃんと店から追い出してくれただろうか。

なぜか台北 その43

【あらすじ】
台湾旅行。
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台北駅に到着した僕は、もう適当なところでの食事とスライムつむりのレベル上げ。
最たるシャワー。
あとはベッドへ決死のダイブをすることくらいしか考えられないほどに疲労困憊。
そして腹は減っている。
早朝から今、午後3時まではもう、ファンタもどきしか食べていない。
台北駅付近はチェーン店的な飲食店しかなく、もちろんそこで用を足そうかと思うのだが、一方で観光客っぽく、地元のがいい、なんてこともよぎる。
台北の地元のもんは、チェーンのやつだよ。
そう思いつつも観光客負けし、ホテル付近にみとめられた屋台街へくりだそうとタクシーを捕える。
日本のそれよりも幾分落ち着きのない外装、内装。
タクシー毎に新品だったりかなりぼろかったりと差異がたくさんあるタクシー。
テントウムシのようだ。
運転手さんにホテルをつげると、さらなる疲労と空腹がどこに隠れていたの?と思うくらいに流れ出てきた。
ああ、僕はさっき北竹のどこかを歩いていたなあ。
そんなことをふくらはぎの痛さとともに感じていると、なんとなくまだ僕が北竹のどこかを歩き続けているような気がしてきた。
ここは僕の家じゃない。
台湾だ。
ずいぶん遠くに来てしまった。
ほらごらん。
タクシーでやりとりされている無線が、スターウォーズの戦闘機のそれに聞こえてくるよ。

なぜか台北 その42

【あらすじ】
台湾旅行。
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電車内の桃園よろしく、「桃園」駅に到着した。
そこは大変栄えており、様々なデパートが駅周辺に乱立する一方で、根っこのように存在する昔ながらの小売店も活気があり、なかなか面白い。
僕は冷房にあたる意味でも知れた名前の日本のデパートへ侵入。
変な帽子が売っていない事を確認した。
小売店をひやかしながら歩いていると、ここには歩道があることに気づく。
そもそも人が多いというのもあるが、あまりに「北竹」駅周辺での無歩道に対して差異がある。
もしかしたら、「北竹」での僕って「高速道路とは知らずに歩いていたおじいさんを交通機動隊が保護」みたいなことになっていたんじゃないだろうか。
急に不安になる。
「桃園」では桃的なイベントは生じず、正直あまり面白くなかった。
名前負けしているし、名前負けさせてしまった。
と、そもそも誤解していた上で話を進めているが、桃的なイベントとは何なのだろうか。
それをここで記載することはできない。
あなたが「桃的なイベント」と聞いて思いついてしまった事。
それが正解である。
そしてその正解はほとんどの人の共感を得る事ができるだろう。
肝に命じたまえ。
それが義務教育のいいところだ!!。
とにかく、もう桃園に用はない。
台北駅へ向かう。

なぜか台北 その41

【あらすじ】
台湾旅行。
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慣れとは恐ろしいもので、ついさっきまで戦々恐々としていた切符購入にも、特に何の感情も生じずに行えるようになった。
北竹駅を出発する決意をした僕には、腹は減っていたがこの遠出の意味が見出せない事の方が切実だった。
まだ午後を少し回ったくらいということもあって、台北のホテルへ直接向かうのではなくてどこか寄り道をしようと考えた。
仏教の六道の地獄方向のひとつは「北竹ホーム道」ではなかったかと勘違いしてしまいそうな灼熱のなか、電車を待つ。
僕の買った切符は「桃園」駅という、台北よりの時点で通過する駅。
当初の目的であった「樹林」駅も捨てがたかったが、午前中に見た限りでは樹林ではなく、ならばそれに執着する事もないかと、日本人的にはかなり俗っぽい印象を持ちやすい「桃園」にしてみた。
おそらく新橋とか五反田にもあったはずだ、「桃園」。
電車は結構混んでおり、ドアのところに段差があったり、ドア横の安心ゾーンはよくわからない手すりなどで浸食されている。
いまいち居場所を確保できないまでも、乗客はなぜか女の子が多くうれしい。
それが誰にでも感じてしまい、その感情が旅行中ということに起因する何かなのかはわからない。
ともかく、AKB48換算を行うとこの国の女の子は皆「TAIWAN∞(ムゲンダイ)」に属しているようなもので、さきほどの六道といいこのムゲンダイといい、どうもアシュラマンがちらほらする。
いや、今ブログの到着地点はアシュラマンではない。
桃園だ。

なぜか台北 その40

【あらすじ】
台湾旅行。
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台湾の「北竹」駅から次の駅への歩行大作戦が、歩行者にやさしくない台湾政府の政策により失敗。
しかたなく、もと来た道を戻る事にする。
この1時間半はいったい何だったのだろうか。
結果的には「北竹」あたりで1時間半、座っていました。
「北竹」あたりで1時間半、考え事をしていました。
「北竹」あたりで1時間半、コンクリートブロックの中から化石を探していました。
そういうこととあまりかわりはなく、いやずっと歩いていたじゃないというにしても、そこで目の当たりにしたのはアイスを食べながら接客するコンビニ店員、仄暗いトンネル、蛍光色の何かの卵、川辺の畑。
これらは「そうでもない」。
多少道を間違えながらも駅付近に到着する。
作戦前には開いていなかった店も開業しているようだが、もはやそこにどうこうする力もなく、ただホテルでシャワー浴びてスライムつむりのレベルを上げたい。
そのくらいの要望しか、僕の頭の中には残っていなかった。
あとは蒸発してしまった。
ただ、これは結果的には「北竹」におけるイベントの最たるもののひとつになったのだが、駅の駐輪場。
とは言っても駅付近に大量に自転車が止まっているという箇所なのだが、そこでおもむろにねずみを見た。
ねずみは白昼現れるにはあまりに大きく、一瞬ねずみじゃない、何か別のほ乳類なのではないかと勘違いしてしまったほどで、いわゆるラットの類い。
焦げ茶色したそれは、それほど悪びれる様子もなく堂々とコンクリートに開いている大きな亀裂に入っていく。
日本でも繁殖力と悪知恵を持つでかいねずみで住民が困る、というニュースがやっていたが、台湾でもそういうねずみがいるのかもしれない。
あれは、猫の手には負えない。
そのくらい大きく、関わり合いを持ちたくない風貌だった。
おそらく僕があれをはたいたら、僕はレベルアップできる。
しあわせのくつを履いて歩くのよりかは効率がいい。

なぜか台北 その39

【あらすじ】
台湾旅行。
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川辺で謎の畑作業を営むおじさんを横目に、僕はまだまだ歩いていく。
すると、橋が見えてきた。
対岸には田んぼが見えており、何か台湾固有種が見つかったりしたら面白そうだ。
橋を渡る事にした。
しかしどうしたことか。
今まで苦労してきた台湾特有、かどうかは分からないがとにかく苦労してきたシステム。
歩道がないという問題がここでも現れた。
すなわち、橋に明確な歩道はなく、ほぼ車専用の扱い。
駅から1時間以上は歩いてきただろうか。
進むのに困っている訳だが、もちろん戻るにも面倒くさい。
どうにか活路を見出そうとしていると、歩道ではないにしても「ここ車侵入しちゃだめ」という感じの車線エリアが道路の端に描かれている。
そこを歩く分には問題なさそうで、しかも対岸へ渡ることができる。
さっそく安全地帯らしき箇所を渡り、対岸へ赴く。
どうやら対岸とは言っても本当に「川辺の端」までしか行けず、橋を渡りきってそちらを歩いていくというのはできなさそうだが、仕方ない。
とりあえず今は田んぼだ。
橋の横に設置された、緊急時用に用意されたような細い階段を下りると、橋げた付近に出る。
正直雑草やらごみやらが散在していて、「美しい場所だからここに住みます」とは決して口にはできない場所だったが、なぜか一人寝ているものがおり、僕の血をたぎらせた。
蛇もいそうでその点びびりつつもどうにか田んぼゾーンに出る。
ここまでは日本のそれと変わりはなく、いわゆる田んぼだ。
しかし日本では見られない生き物がいたりするんじゃないだろうか。
見たところ、ここにいる生き物は稲だった。
そして結果的には、稲しか見つからなかった。
それは積極的に生き物を探す事をしなかったから、というのが主な原因。
本当はどこかに何か、いただろう。
しかし自身が発火しそうな暑さの中、人のうちの田畑を探索するというのは何か面倒なことになりそう。
そう思ったら、もう歩くのはいいかと憑き物が離れたかのような気分になった。
対岸には来ているものの田んぼゾーンからどこか出られるような道も見つからず、結局「北竹」駅に戻る事にする。
遠い。
しかし仕方あるまい。
戻ろう。
ともかく僕の人生において、「台湾の北竹駅から一駅分歩こうとしたが戻る」という項目にはチェックがついたので、次誰かに「あれお前、台湾の北竹駅から一駅分歩こうとしたが戻るっていう項目はどう?」と聞かれたら「チェック済みなのでもうやる必要はありません」と答えられることになった。
橋げたの影では、まだ誰かが寝ている。
お前が憑き物だったのか。

なぜか台北 その38

【あらすじ】
台湾旅行。
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台湾のよくわからない場所の川沿いを歩いていく。
そこはコンクリートで盛られた土手のようになっており、当たり前のようにそこにあがる階段は見当たらない。
大型車が敵意むき出しに走る幅広道路を永世中立の精神を持って渡り、コトなきを得る。
土手にあがると、そこは道路と土手、川と高架が遠くの都市的な方へ続いていく。
そんな風景で、まとめると日本だった。
ただ、土手から川をのぞこうとするとき、その間にある雑草地帯。
その雑草はやや南国風。
そのくらいだった。
僕は川の生き物に日本でない何かを見出すべく川面を凝視したが、特に何もおらずただ濁った水が流れるばかりであるあと暑い。
おもしろくない。
日本より南国なのに、その感じがない。
ここは日本の幹線道路付近とあまりに変わらず、灰色だ。
新品のえのぐセットを叩き潰したような色彩の生き物はどうした。
置いておくだけでガラス瓶が割れてしまうような音量のジャングルはどうした。
チームで行動し、毒矢で眉間を狙ってくる原住民はどうした。
と、台湾を責めてみてもどうにもならず、そもそも台湾はそれらを約束してくれていない。
偏見も甚だしいところがある。
そして場所がいけないこともあるだろう。
ともかく川沿いを歩く。
「ああ、あそこに自転車が停まっている。あそこまで歩くのはしんどいな」とつねづね思っていた自転車停車地点に到達しかけた頃、土手を下って川まで到達するまでの空間に畑があるのが見えた。
何か水を大きい桶にためていたり、畑の様子をみるかぎりは今でも絶賛栽培中のようす。
太陽の暴力下の土手の上に座り、畑を眺めているとおじさんが何か作業していることに気づいた。
この自転車の持ち主だろう。
おじさんはラフな姿で畑作業を行う。
こんな場所だ。
毒蛇もいたりするんじゃないかと心配になったりもするが、どうもおじさんは畑仕事の最中にて、別の心配をしているようだ。
僕である。
ちらちらこちらを見ている。
どうも台湾ではこんな時間に、ただ人の畑仕事を見ていることはおかしいらしい。
いや、台湾に限った事ではないか。
ともかくおじさん、大丈夫。
僕は毒蛇じゃない。

なぜか台北 その37

【あらすじ】
台湾旅行。
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天井からキノコバエの幼虫ぶらさがっていそうなトンネル。
トンネルとは言っても全長10mではあるが、そんなところを抜けて歩く。
午前11時くらいだろうか。
台湾の11時はすこぶる暑く、台湾製のオーブントースター温度設定は初期表示11時となっているだろう。
民家の密集したところをひたすら歩く。
本来は、次の駅へ向かっているはずなのだが線路は高架の上を走っていてその高架はもう見失い、目立つ建物もなく、ただ帰りの道だけは菓子パンをちぎって落としてきているから見失わない。
ごめん童話混じった。
ともかく目的もそうなく、何か産み出されるとは到底思えない歩きである。
文字通り右往左往しながら歩いていると、下水が横を流れる大きな道に出る。
その先を眺めると見失って久しい高架が見える。
どうにか「次の駅へ向かう」「その途中で田んぼでもないか」といういくつかの希望を思い出し、そちらへ向かう。
それにしても、このときも歩いているところには、4人用テーブルに7人座っていて、さらにそこに昼ご飯を持って座る。
そのくらいのスペースの歩道しかない。
そして歩道と下水に隔たりはなく、下水の壁面には恐ろしく蛍光色を放つ謎のたまご様の付着物。
通りは車がすごいスピードで走っており、一体今日の台湾はどれほどの家族に危篤者が出たのかと心配になるほど。
気の休まる事がない。
先ほど買ったファンタもどきは既にぬるま湯を越えようとしており、突き当たりの大通りはそれまでの申し訳程度の日陰をとっぱらった様相。
高架の影はうまいこと並走する川に落ちている。
台湾から2時間程度離れたところを一駅分歩くことを、少し侮っていた。
しかし川は少し楽しい。
高架と川を沿って、まだ歩く。