【あらすじ】
台湾旅行。
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飛行機は苦手だが窓際で見える風景は楽しい。
雲は、ちょうど眼下に薄く見える海に浮かぶ島を彷彿とさせ、そっと足を添えれば乗れそうな気すらしてくる。
「雲に乗る」というのは多くのメディアでも考えられており、いわば人類共通の夢。
しかもかなり根源的なもののひとつだろう。
しかし実際はそんな事はできず、もしそれをやろうとすれば、ひとつ段差が多いと考えていた人が階段を降り終えたようなぎくしゃくした動作で、落下していく。
そしてこの高さだ。
まだ落下中である。
ただ、雲という「つかみどころのないもの」でも、飛行中の飛行機ほどの速度を持てば、その機体を揺らす程度の抵抗を示してくれる。
不思議だ。
飛行機は順調に航路をたどっているようで、ときどき眼下の雲に、その機影を見せてくれる。
前の座席のモニタで確認してみると、ちゃんと台湾の空港へ向かうことになっている。
この航路確認表示は少し面白く、リアルタイムで刻々変化する。
その一場面が、見た感じによっては「台湾へ何か標準を合わせている感じ」に表示されることがある。
それはなんとなく湾岸戦争を思い出させ、戦争はいけないと強く心に思ったりする。
いや、そんな悲しい方面じゃなく、もっとおもろい方向でこの標準合わせを捉える事はできないだろうか。
ただ、今回ばかりはどのような素晴らしいオチを用意できたとしても、それを最後に持ってくる事はできない。
いがらしみきおの漫画「ぼのぼの」に敬意を示すため、こう締めくくらねばならないから。
「雲に乗り損ねた男は、まだ落下中」