僕は、マーガリンは食パンの全面にまんべんなく塗られている方がおいしいと思っているが、その人は「マーガリンはまばらな方がいい」と言った。
そのようにしてみると、確かにマーガリンがあるところとないところが不規則に口に入ってきて、飽きない気がする。
むしろおいしい。
こうして僕は、マーガリンをまんべんなく塗るおいしさとまばらに塗るおいしさ。
両方を楽しめる人間になった。
今朝は昨日降っていた雪がすこし残っていて、水浸しだ。
かすかに残った轍の残りが、ちょうどまばらに塗ったマーガリンのようだった。
本気の轍は危険だが、水を含んでいるものはやわらかい。
僕は、この水を含んだ轍の残りを強く踏むのが好きで、そうすると雪がはじける。
このとき、轍は地面の全面にまんべんなくあった方がいい。
踏むとおもしろい箇所がたくさんできるからだ。
しかしその人は「轍はまばらな方がいい」と言った。
追跡しやすいからだそうだ。