=====
2012年カレンダーの回想です。
=====
11月12日。
「お前はまた生春巻きで欲情しているのか」
「えっ、そんなことないよ」
「わかるんだよ、お前は」
僕は欲情すると、油絵に腕を振るう癖がある。
トモはアトリエの僕を見て、そう言ったのだ。
「ちょっと待ってよ。なんで生春巻きなのさ」
「あ?」
「ほら、ここには生春巻き以外にもあるじゃない」
・生春巻き
・赤福
・やきそば
・車のキー
・コンパス
「どれで欲情したか、わからないじゃないか」
「お前、こんなかでったら、生春巻きがダントツじゃないか」
「そ、そうなの?」
「そりゃあそうだ」
「なんか分からないけど、自分のこと誉められたみたいでうれしい!!」
あの、生春巻きの薄皮から見える淡いみどり色。
ときどきえびの赤。
あれがどうしても油絵で表現できないんだ。
「あ、お前そんな顔して。また赤福のことで困ってんだろ?」
え、何それ。
生春巻きで欲情する事は知ってるけど、赤福のことは、僕自身分からないことだ。
「何、赤福って。ぜんぜん困ってないよ」
「分かるんだって、お前は」
「赤福の余ったあんこを使って、油絵を書きたいんだろ?」
「いいよちょうど赤福もあるし」
そうだったのか。
僕は油絵に腕を振るうと、赤福に赤褐色を求める癖がある。