降心の雪 その1

今年は別の用事もあり、福島の墓参りに行ってきた。
東京から車で5時間ほどあれば着くが、福島の知人は不穏なことを口にする。
「道が凍結することはないと思うけど」
それほど凍結の恐ろしさを考えていなかった私たちは一気に戦慄し、慌ててスタッドレスタイヤの車をレンタルすることにしたのである。
朝4時に起床し、5時に出発。
この時間は魑魅魍魎しか起きていないとはいえ、魑魅魍魎も轢いてはならない。
魑魅魍魎を轢いたら魑魅魑魅魍魎魍魎になるから。
人はもちろんのことである。
私見だが、早朝に歩いている人は、少し油断している。
主に道路の横断に、油断している。
安全運転で道路を進む。
特に問題もなく高速道路を進む。
案外サービスエリアの食事コーナーが開店していなかったこと。
途中で買った牛タン串が以上なうまさを見せたこと。
事件と言えばこのくらいだった。
しかし、である。
ある峠にさしかかった辺り。
少し雲行きが怪しくなってきたかなと思ったとたんに雪が降り出す。
最初は雪を喜んでいたが、それも真横に雪が降るようになってくると、徐々に不安になっていく。
「道が凍結することはないと思うけど」
速度規制がなされ、渋滞の先頭を除雪車が並んで走行している姿を確認したとき、凍結よりもひどいんじゃね?とみな思ったのである。

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