ある有名な女性歌手は、いわゆる「ざる」なのだそうだ。
お酒を飲んでも酔わないということ。
僕は最初の飲酒でひどい目にあって以来、どこかで自制しているのか、あるいは強い方だったのか。
意識を失ったり足下がおぼつかなくなったりすることがない。
しかし大量に飲むわけでもないので、どうも「ざる」トロフィーは獲得できなさそうである。
さて、この「ざる」という言葉。
褒め言葉なのかそうでないのかが気になった。
というのも、例えば会話での「あいつはざるでねえ」というのは、どうも2つの意味を含有していると思われるから。
「あいつはざるでねえ」
「だから、酔っていても話を聞いてくれる」
「だから、こっちがへろへろになっても安心できる」
「あいつはざるでねえ」
「だから、酒がもったいない」
「だから、酔った勢いの話ができない」
「あいつはざるでねえ」
「ウスよりもメジャーなのに、さるかに合戦には参加できなかったんだ」
「猿と名前がかぶるからだって」
前者はポジティブざる。
おそらく、相手の話をちゃんと聞いてくれるし、送り迎えすら期待されてしまう。
対して後者はネガティブざる。
酒がもったいないというのは建前で、それは「いつも一歩引いている、腹を割って話ができない」というネガティブなものの言い換えだろう。
この2つの意味。
おそらくというかもちろん、「ざる」という言葉が使われたシチュエーションによって、使い分けられる。
しかし、僕は「ざる」というものは必ず「ネガティブざる」としての意味だけを持ってもらいたいと思っている。
人間はいつだって、ざるの中には一粒の砂金が残ることを望んでいるわけでして。