海岸とはいっても、黒石海岸には申し訳ないが白い砂浜という感じではなく、やや黒石ごつごつの海岸だ。
しかもこの黒石、やたら滑るので、クロックスもどき装備の今の僕が歩き回ることは、何かのフラグを立たせる。
しかし砂浜部分もあるので、いくつかあるタイドプールに向かって歩き出した。
何も考えていなかったが、たまたま引き潮というのは都合がいい。
満ち潮だったら浜全体が海に埋もれてしまうので、まあ眺めるだけにするかということになっていた。
しかし引いている。
引いている海岸は、かなり楽しいことになっている。
まず、漂流物だ。
珍しい生き物が流れついていて面白いこともあるけど、たいがい死んでいる。
一方で人工物も多様で、単なる発泡スチロールだったとしても、それは海で捕まえた生き物を入れるのに便利であったり、海に投げて遊んだりとゲームボーイ並みのプレイバリューだ。
そして角の取れたガラス。
おはじき状のそれは、集めだすと熱中する。
それは貝殻集め並みで、集めた後の奇麗さと、集めた後の案外じゃまくさいっぷりは、それを越える。
波の、寄せては引く寄せては引く運動に付き合うのもいい。
サルにそれを教えると、死ぬまで「寄せては引く寄せては引く運動」で遊んでいたらしいし。
タイドプールへ行ってみよう。
南天の黒石海岸は、引き潮のときはいい具合のタイドプールができる。
昔はたくさんいたけど、今では鋭利な貝殻ばっかくさいカキが覆う岩肌を注意しながら進むと、油断したカニやハゼが取り残されたタイドプールがいくつもある。
小さいプールは煮えるような熱さになるにもかかわらず、小さい魚がどうにか生きながらえているのが不思議だ。
ここには生き物がたくさんいることもあるが、なかなかのレアアイテム「ウニの殻」があることにも注目したい。
割れやすいそれの、完全版はかなり珍しい。
見つけたと思っても、それは片半分が欠けていたりするのだ。
岸からだいぶ離れたところまで歩くことができたが、その途中でクロックスを貫通する何かを踏む。
それは、足を踏み込んだときのみ少し刺さるといった案配で、普通に歩く分には影響がない。
しかしときどきそうくるものだから、もうタイドプールはいいよという気分になってきた。
それでも「引き潮の境い目」まで来た。
ここにはフォッサマグナ並みの溝があって、昔ここを潜ったときは、ニモが顔をつつきにやってきた。
今もつつきに来るだろう。
海底近くの岩肌には小さい穴があいていて、そこは「必ずタコが住んでいる」ことでnimbus7942仲間(家族のみ)間で有名だ。
今もいるだろう。
ただし今日はやめておこう。
ニモにつつかれるのも、タコを掲げるのも、ちょっともうファンタジーじみてすごい。