ちょっとそこまで。24

数は少ないが、やたら飛ばす車が走る道路を渡ると、もう目の前は海だ。
浜辺に下っていく階段を、砂でレンタカーが汚れることも考えずにかけおりる。
と、途中で止まる。
それは大量のフナムシに臆したわけではなく、ここには昔、なんだかでかいマメ科の植物がたくさんあったことを思い出したからだ。
僕は植物のことはよくわからず、この階段の周りに生えている草を見ても、それがその植物なのかどうかも思い出せない。
しかしなぜマメ科の植物であるかを指摘できるかというと、まさにマメをそいつが育んでいたからであって、しかもそれが大きいのである。
故に覚えていた。
もしかしたらまだあるかもしれないと、海岸にも降りずに探したが、よくわからなかった。
そのマメを大事に採取したような気もするが、それもどうしたか覚えていない。
結局、巨大マメの痕跡は記憶にしか残っていないのである。
階段を降り終えると、さらに大きくなって海は僕の前にあらわれた。
カニが穴を掘って暮らしていた土壁はコンクリートで固められてしまっていたが、それ以外は何も変わらない。
夏休みで遊んでいる子供が2人。
子供がいることも変わっていないし、それは確か昔からいつも2人だった。
人数も変わってない。
僕はタイドプールが好きで、ファミコンに飽きたときはたいがそこでやどかりをじっと見ていた。
一番気に入っていたその場所付近で、ミナという巻貝を採っているらしいご夫人が見え隠れする。
あのご夫人も、たぶん変わっていない。
ミナばっか食ってる。
変わったのは、極端に足が海水に触れるのを恐れることくらい。

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