カレンダーをはがすとき、それを止めていた画鋲が外れ、床に落ちてしまった。
「画鋲は、落ちたときが一番存在感ある」
今まで気づかなかった。
壁あれば画鋲は当たり前のようにあるわけで、それを注目しようとなんて思わなかった。
あるときは「ああ画鋲がついているな」くらいだったし、またあるときは「はえがいるな」くらいだった。
それが落ちたとたん、とにかく画鋲しか見ないようなモードになるんだもの。
「画鋲が落ちているらしいエリア」
その捜索に労力を割かない人間はいない。
いたとしたら無休ではだし生活をしていて足の皮が大変な事になっている人か、その後そのエリアに人が立ち入る心配がないことが分かっている人。
あるいは痛みを快感に変換できる人だ。
僕は快感コンバートできないし、足の皮は人並み。
たいがい毎日そのエリアに立ち入るから、もう、すぐ画鋲探しを始めた。
「画鋲が落ちているらしいエリア」なんかに寝てられないから。
次回
「画鋲を落としたとき、人は2つ、探し物をする」