レンタカーを借りて、小樽へ。
手作りオルゴールを作るのだそうだ。
小樽とオルゴールの関係はよくわからないが、そんなことよりも運転が心配である。
知らない車を運転して知らない道をゆくのは、けっこう怖い。
知らない車といっても、それはブレーキとアクセルがありハンドルがありと、知っている車と似ている箇所もある。
しかしアクセルの敏感さ、ブレーキの効き具合、車体の大きさなど、違う点も多い。
近い将来、うちの車の化石とこのレンタカーの化石を見た学者は、違う種類に分類するだろう。
こないだも似た事を書いたような気がする。
小樽へはまだ時間がある。
不慣れなカーを乗り転がして向かったのが「鰊御殿」という場所だった。
観光名所となってはいたが時期が微妙なのか、恐ろしく荒涼としている。
何もかもがくすんだ色に、静かに染まっているように見える。
お土産屋さんも、見下ろした先の水族館も。
岬の末端にあるその建物周辺には、自殺者をそれほど真剣に遮らなさそうな遮り。
その向こうには、いい崖。群青。封鎖された灯台。
エンジン音を聞いて表に現れるお店のおばさんを、ひどく錆び付いた手すりに覆われた水族館を見て何も感じない訳ではないが、その多くは今が午前9時という、少々はりきり観光客の自分が原因であるわけで、むしろそのように考える事とした。
小樽付近に来ると、何やら日本らしくない作りの建物が目をひく。
小樽はそういうものなのだそうだ。
小樽運河という美しい場所があり、そこで運河が写らないくらいの大人数の人が記念写真を撮っている。
小樽はそういうものなのだそうだ。
どこかで小樽と関係があるのだろう。
ガラス細工の店が軒を連ねるなか、目的のオルゴール店を探しつつ歩く。
小樽港というものがあるくらいだから、すごく海産物がたくさんあるのだろうと思っていたけど、場所が違ったのか、そこはおしゃれさんと観光客くらいしか来なさそうな店ばかりなのである。
僕らは他の観光客に混じり、けどそれほど店をひやかすこともなく、目的地のオルゴール作り店に到着する。
全くそのシステムのことを考えていなかったが、どうやら既に完成しているオルゴールにデコレートを施すらしい。
黄色く美しいビーズが、かずのこに見えてきた。