駅のエレベータの外側を覗くと、アルミで出来た土台部分が見えて、そこには猫の足跡が点々としていた。
僕がそこから得られる情報は、これだけ。
「猫がそこを歩いた」。
ここに、奇跡を付加してみる。
奇跡 + 0
「あ、あそこ。猫が歩いたんだね。」
奇跡 + 1
「あ、あそこ。魚くわえた猫がいたんだね。」
奇跡 + 2
「あ、ルンバだね」
○奇跡 + 1では「何でコイツ、猫が魚くわえてんのがわかったのか」という点が、それにあたる。
足跡付近に魚の尾の跡でもあったのが見えたのか。
前足の跡が強めに残ってたため、体前部に重さが加わっているのがわかったのか。
どちらにしても、彼の能力には驚愕するばかりである。
○奇跡 + 2では「足跡でダンスの種類が特定できるアイツ」という点と、「猫がルンバをたしなむ」の2点がそれにあたる。
彼は、この短い文章で、奇跡を2つも演出してしまった。
ちなみに、彼が猫の色が黒であること、足跡からタンゴであることを見つけ出したら、奇跡数はもう少し上がる。
今度は、まどろっこしさを付加してみる。
まどろっこしさ + 0
「猫が歩いたんだね。」
まどろっこしさ + 1
「あそこ、ほら。肉球のあとが、点々としてるじゃん。あれ、猫が歩いたってことかな。」
まどろっこしさ + 2
「あれ。ほらー、あれ。なんだろ。あの、点々。え、もう電車来た?。でも、ほら。」
○まどろっこしさ + 1では、肉球のくだりが、それにあたる。
そんな跡があるのは、猫が歩いた以外はちょっと考えにくいため、「猫が歩いた」でいいはず。
肉球うんぬんは、いらん。
○まどろっこしさ + 2では、本題に入るのが遅い点と、電車が来てしまった点が、それにあたる。
あー、まどろっこしい。
僕はひとりだったので、心の中で「猫」と思いました。