希釈

明日は、大学受験の結果通知が来る日だ。
本命で、ここじゃなきゃ大学に行く意味がないと思っている。
だけど、テストの出来はいまいちだった。
正直、合否は微妙なところだ。
通知が来ても、とても自分で開封して結果を見ることなんてできなそうだ。
親に結果を見てもらおうか。
でもそれじゃほぼ自分で見たのと同じだ。
親が僕を呼ぶ、その声のトーンを考えるだけで、僕は封を開けるときのような、緊迫した気持ちになるだろう。
じゃあ、親に結果を見てもらって、合格なら明後日の朝食にミルクコーヒーを、不合格ならミルクティーを入れてもらう約束をするのはどうだろう。
明後日の朝のタイミングで分かるんだけど、少なくとも席に着くまでは、テーブルの上の飲み物がどちらかなんてわからないし、飲んでみて、もしミルクティーだったとしても、まだ「ミルクコーヒーと間違えたんだな」と思うことで少しは心を刺激せずに済むかもしれない。
・・・だめだ、そんなことをしたら明日はミルク何々のことで、頭が一杯になってしまう・・・。
それに何かの理由でカルーア・ミルク を出されてしまったら、とか考えるだけでも眠れない。
結局、こんなことでは僕の不安は希釈されないようだ。
どうしよう・・・。
そして当日。
「ということで母さん。結果通知が来たら、この小ビンに入れて、相模湾のほうに向かってくれない?」

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