知らぬ人が倒れていたとする。
どうやら死んでいるようだ。
このとき、驚く人もいれば、助けようとする人もいる。
しかし、みんな、一瞬かもしれないが、心底おびえるはずである。
それは何に対してだろうか。
その人を死に追いやったなにかが、近くにいるかもしれないからだろうか。
自分と同じく動いていたものが、その動作を終えたことを感じ、いつか自分も同様の結末を迎えると思い知らされることに対しての失望か。
場面によるだろうが、僕はそうは思わない。
もっと単純に「死んでると思うんだけど、いきなり動き出したらどうしよう」という点で、恐怖しているのだと思う。
静的だと判断したものが、いきなり動的になる。
その性質の移行は、特にこのような緊迫した状況では恐怖にもなるのだ。
ということで、今までの話の点のみを考慮すると、金田一耕助シリーズに登場する死体は、かなり人にやさしい。
もう、絶対死んでるよね、をよく出してくれている。
だいぶ死んでるアピールがすごいため、「いきなり動き出したらどうしよう」という不安を感じることも無いのだ。
誰も、水中で逆立ちして遊んでいるとは思わないし、同様に、凍った湖面に頭から刺さって、頭を冷やしているとも思わない。
逆にそれで生きていたりしたら、それは明らかに悪意のあるいたずら行為であり、許しがたいものがある。
法的な手段に訴え、そんな不謹慎なやつを合法的に死へと追いやることができるかもしれない。
そして今回は、それ自体がちと不謹慎であり、ごめんなさいである。
4/1の力を借りることにする。