敵討ちって言うと、かっこいいかもしれないけど。
やるほうは大変なのだ。
まず、敵を見つけるのが一苦労。
それができずじまいで、しかも帰る場所もないから一生放浪するような人も結構多い。
それに、返り討ちってのも、十分考えられる。
ご主人と私、助次が旅を始めて2年。
もう、飽きてきた。
とある夏の日。
「妙之進さま!!。あすこで団子食う男は、敵ではありませぬか!?。」
「いや、似てはいるが、違うな。」
「妙之進さま!!。あすこでかんざしを選ぶ男は、敵ではありませぬか!?。」
「いや、似ていないな。」
「妙之進さま!!。前から歩いてくる男の着物は、敵と同じではありませぬか!?。」
「確かにそうだが、それがどうした?。」
「妙之進さま。辻斬りの一件から、2年が経ちました。敵の風貌も変わってございましょう。そんなときは、むしろ顔立ち以外の特徴を探さねばならないときもございましょう。」
「間違いというのもおこるであろう。」
「妙之進さま。敵討ちの旅に出てから、もう2年が経ちました。時代も風俗も変わり、人も変わるのです。」
「ふむ。」
「妙之進さま。もはや、我々が探しているのはあの男ではございません。そもそも、その男のちゃんとした記録もございません。我々が探しているのは、「かたき」という、ある種のシンボルで、クリーチャーなのです。」
「ふむ。確かにこの2年間、我々は愚直なまでに男を捜してきた。しかし、その記憶も、記録も曖昧だ。まだ、確かと認識できた衣装を敵とするというのも、わかるな。」
「左様にございます。」
「では、あすこの団子屋で、「シンボル」と「クリーチャー」について、もっと適切な語句がなかったか、考えてみよう。」
続かなくてもよさげだけど、つづく。