何かが起こりそうだよストーリー アンリミテッド

ヒロユキが12歳の頃、そのいとこのヨシミは、ATMの順番待ちで横入りされていたっけ。
サトシはそう思った。
ヨシミの同級生のカズヒロは「ここまで知名度が高いのなら、「アツはナツい」を辞書のギャグの項目例として載せてもいい」と思っていたし、カズヒロと苗字が同じなタカヤは、ガンダムの股間についているVマークをビクトリーのVではないな、と考えていた。
カラオケでアンコールの本当の意味を模索していくことが趣味だったトモミはタカヤのことを知らなかったが、耳かきのスコップ部分のカーブ角度にはこだわりたいと思っていたし、その弟のツバサは4回目の手術をした。
そんなツバサと同じ肺活量のハムドが防人だった頃、学校の一緒だったシンジはアナログアンテナで水脈を見つけ出すことが、ナミはジャンプ中キックからのめくりが得意だった。
ナミのめくりを実学的に学んだハルゾウは「みこすり半劇場というものの中では、とにかく「半」の部分が気になる」と言っていたが、その将棋友達のゲンジは、基本的に無傷だった。
ゲンジのクローンのオサヨは気の強い女性で、厚着をすることで自分を大きく見せようとしていたけど、それを愛おしく見ていたヘイハチはアシンメトリーヘアだった。
この二人は間違いで手錠を片手に付けられた状態になっちゃって。
オサヨなんてずっと長袖で手錠を隠そうとしていたけど、その結果、ただの仲良し風になっちゃってた。
その時代、ショウジは野球の審判をしていて、ボールパーソンからもらった直後にそのボールを捨ててみたいと思っていたが、ピッチャーをやってたトモキは、ボークの意味が分からないので、とにかくてきぱきやっていた。
そんな僕らが、鍋パーティーをすることになりました。
よろしくお願いします。

何かが起こりそうだよストーリー
何かが起こりそうだよストーリー リターンズ
何かが起こりそうだよストーリー プレリュード
何かが起こりそうだよストーリー プロローグ
何かが起こりそうだよストーリー ノクターン
何かが起こりそうだよストーリー エチュード

失ってこその最良。

「あなたですか、雌雄同体の研究をなされている方というのは」
「はいそうですけど」
「どんな研究なんですか」
「雌雄同体というと、読んだ通りメスであり、オスでもあるということです。カタツムリやミミズがそうです」
「彼らにはオスとメスの区別がないんですか」
「区別というよりも、両方の特徴を持っているんです」
「そして僕の研究というのは、雌雄同体をメスとオスに分けてみようというものなんです」
「といいますと」
「単純にオスの生殖器官、メスの生殖器官だけをそれぞれ発現させるだけではなく、その行動や長期的な繁殖なども視野に入れての雌雄分離計画になります」
「このことで、多くの生物が雌雄に分かれている理由を、様々な観点から見ることができます。また、少し突飛ですが逆の発想で雌雄異体の種を雌雄同体にすることへの応用も可能かもしれません。例えば畜産業にて雌雄同体の牛を開発できたら、クローン技術とはまた違った生産性向上技術となります」
「すごいですね」
「ただ、単純に「性別のなかったものにそれを与える」という行為に何とも言えない魅力を感じている、というのは否めません。確かにすごいですよね」
その後研究は進展し、メスのカタツムリ、オスのカタツムリが誕生した。
彼らは雌雄同体の個体と同じように食べ、成長し、生殖活動を行い、雌雄だいたい同じ割合で増え。
順調に種を保存し続けるように見えた。
しかしなぜかその繁殖能力自体はオリジナルに比べて劣っており、個体数は増えなかった。
「こんにちは先生。また来ましたよ」
「ああどうも。こんにちは」
「その後の研究はどうですか」
「いやあ。いい感じなんですけれど、一方では行き詰まってしまいまして」
「雌雄異体の個体は取得できたんですが、どうも繁殖能力が低い。生殖活動は行うんですが、とにかく増えないんです」
「それは不思議ですね」
「そう。でも、なんとなく理由がわかりましたよ」
「なんですか」
「ベターハーフって知ってます?」
「いやあ知りません」
「今度調べてみてください。で、何となくわかったというのは、彼らはずっと雌雄同体だったから、それはもしかしたら常にベターハーフと一緒だったとも言える訳です。しかし今度の研究で、僕は彼らを引き離してしまった」
「だから雌雄異体となった検体たちは、永遠にベターハーフを失ってしまったようなものなのかもしれない訳ですよ」

田村8

タロットの絵柄に被害者が模される、猟奇的な連続強盗事件が発生。
これを「タロットの絵柄が変われば事件は起こらなかったはず」と読んだ金田少年は一路、タロットカードが生まれたあたりの時代へ!!。
=====
「あのーすいません。大アルカナの絵を描いている人ってどなたですか」
「あそこでコーヒー飲んでる人だよ」
さっそく金田少年はその男に事情を説明し、絵柄を変えてはもらえないだろうかと相談した。
「ひどい事件なんです。太陽を模した事件では被害者が日時計の中央に拘束されていたし、星を模した事件では被害者の周りにまきびしがちりばめられていたり」
「まきびしが何なのかはわかりませんが、絵柄を変えるくらいならいいですよ」
と、金田少年は男の前に置かれていた、描き途中らしきタロットカードを見て驚いた。
「ちょ、ちょっと待ってください。この田村というのは何ですか」
「え、田村ですよ田村」
「ちょっと見せてください。・・・ジャスティスがないじゃないですか。正義」
「何ですか正義がないって。風刺ですか」
「そうじゃなくて、正義の変わりに田村なんですよ」
「何ですか正義の変わりに田村って。田村の擁護ですか」
「いやそうじゃなくて」
「いや言い過ぎではないですよ。正義の変わりに田村ってのは。ええ」
「どういうことですか」
「いや田村のやつ、本当にすごいですから、やっぱり」
「だから大アルカナのひとつに入れたんですよ」
「本当に田村が大アルカナなんですか」
「みんなと話したんですよ。やっぱり田村は入れておきたいよねって。もう8対2くらいで田村でしたよ」
「いいえ正義にしてください、正義に」
「そんなに怒らなくても。まあいいですよ。仕方ないですね」
このとき、金田少年は歴史の改ざんをしてしまったかもしれないことに罪悪感を感じていない訳ではなかった。
しかし後世ずっと正義が田村であることへの不信感。
そして結局どこかで田村が正義に変わっているだろうことを考え、強気に要求したのだ。
しかしそんなことを忘れてしまうくらいの絵柄が、大アルカナの中にあるのを気づいた。
「まだです。まだあります。これなんですか」
「吊された男」
「吊された男?。ああこれですか、鬼六です」
「ちょっと待って、言いたいことたくさんあるから」
「まず、事件です。事件のことがありますので、被害者の傷は小さくしたいのです」
「はい」
「そして絵柄、ね。これ和服の女の人が大変なことになってるから」
「はい」
「そして鬼六ね。これ全部まとめて絶対絵柄変えて。そして名前も吊された男にして」
「結構絵を描くの大変だったんですけどね」
そののんきな言い訳に、金田少年は怒鳴らずにはいられなかった。
「花と蛇知ってんなら、まきびし知ってんだろ!!」

本のあらまし。

「あ、ばあちゃん?。オレオレ」
「はい、どなたですか」
「ああオレだって」
「・・・へえ、ゆかりんとこの?」
「そうオレ」
「どうしたんだい、久しぶりじゃあないの」
「そうなんだけど実は、ちょっと困ったことになっちゃって」
「なんだい」
「実は今、ちょっと交通事故起こしちゃって」
「ええ、体は大丈夫なのかい」
「ああ、オレも相手も大丈夫なんだけど・・・」
「どうしたんだい」
「ちょっと車の方をずいぶん壊しちゃったんだ」
「へえ」
「そして示談ってことになったんだけど、今お金なくて」
「たいへんだねえ」
「で、お金貸してくんない?」
「いやだねえ」
「え。いや今かなり緊急なんだよ。口座に20万円振り込んでくれればいいから!」
「いや、だめでしょう。ほら今、詐欺みたいなものもあるじゃない」
「急ぎなんだってば!」
「いやいやいやいや。事故も示談も本当かもしれないけど、あんたの電話、テレビで見た詐欺の手口と同じだもの。怖いわよ」
「だからゆかりんとこの息子だって!」
「ほら名前言わない。しゃべり方も違うような気がするし、声紋も違うんだろうねえ。たぶん指紋も顔つきも、たかしとは違うんだろうね」
「ほら、たかしだって」
「いやいやいやいや。もう警察に相談しようかねえ」
「あら、切れちゃった」
「どちらにせよ、詐欺にあわなくてよかったわ」
「入金を拒否しつづけられたのも、あの本のおかげね」
のんのんばあとオレ

スター気取りで。

「目をつむると星の見えるコンタクトレンズ発売」
眼球に対して電気信号を発することで、あたかも星空が見えるというコンタクトレンズが開発された。
リラックスして目をつむると、それを感知。
迫るような星空を体験することが出来るという。
しかし発売は見送られた。
寝ようというとき、なぜか目を閉じた使用者のまぶたが光を発し、室内灯を消した天井に星空を投影してしまうことがわかったからである。

1月1日はいつもマジシャンズ・レッド。

「おまえんとこにあった日めくりカレンダー、なんかいろんな色がついてるぞ」
ああそれ?。すごいんだぜ。
「え、何が?」
お前、こんなの知ってる?。地球の生まれたときから現在までを、1年で表したカレンダー。
「ああ知ってる。西暦って大晦日のラスト数分だか数秒とかなんだよな」
そう。あれの、人生版なんだよ、それ。
「え、じゃあ人生80年間を1年で表したってこと?。誰の?」
俺の人生だ。
「すごいじゃない。いやいやかな?。寿命とか分かっちゃうんだろ?」
いや、書いてはない。スケールとして、生まれた日が1月1日、死ぬ日が12月31日ということ。
そしてその日にあたる人生の部分が、どんな感じか、かなり曖昧にわかるんだ。
「曖昧に?。内容なんて書いてないけど、この日ごとの色づけで分かったりするの?」
そう。
表紙の裏に説明あるだろう。
「ああ。青だと健康低迷期、赤が運気向上いいことある、か。黄色が人間関係円満で、黒が身近に不幸が起こる、とかいろいろあるな。まあ怖いけど、確かに曖昧だなあ」
そうだな。でもこのカレンダーで最も重要なことがわかった。
「そうだろうね。曖昧とはいえ、人生の目盛りごとのイベントが分かる。今までお前に起きたことで象徴的なことが、このカレンダーの色分けとして載ってるんだろ?。黒の不幸なんかをこれまでの人生と照らし合わせれば、逆算で寿命とかわかるだろうしな」
お前、ぜんぜんわかってないよ。
「何がよ」
12月31日を見てみろよ。
「ピンクだ。青とかじゃないんだ」
俺にとっては寿命なんかより、死ぬ日がモテ期の絶頂のときだってことがわかっただけで満足なんだよ。

鉄二

「この度は本当におめでとうございます。司会をやらせていただきます鈴野と申します」
「こちらこそお願いします」
「ではさっそくなんですが、今回ご結婚されるお二人の司会をやらさせていただくにあたり、お聞きしたいことが」
「といいますと」
「どのようなきっかけ、おつきあいがありましたかを拝見したいんです」
「ああ、なるほど」
「そうすると司会にも艶が出ますので」
「いやあ、そんな人に話すような何かはないんですよ」
「ただ、僕と彼女は趣味が合って、それからなんです」
「え、それって何ですか」
「二人とも鉄道が趣味で」
「ああ、最近流行っていますよね」
「そうなんです。二人とも電車とか線路が好きで」
「それで、サークルとか」
「いや、そうでないんですが」
「ここがすごいんですけど、ぼくら、手相が路線図なんですよ」
「どういうことです」
「ほら、僕の右の手のひら、山手線っぽくないですか」
「ほんとだ!!」
「で、彼女の左手がほら、こう」
「おお、中央線周辺だ」
「ね、すごいでしょ」
「井の頭線まである」
「で、こうやって手を合わせると」
「こりゃ東京都の路線図だ・・・」
「そして手相の人に言わせると、東京から立川の中央線が、結婚線なんだそうです」
「すごいですね、結婚線の開通だ」
「僕が中野まで、彼女が中野から」
「いや、これはほんとすごい」
「まあ、こういったいきさつでして」
「でも、ここまで見事だと、地下鉄とかも欲しいですね」
「いやあ、子供はまだ早いですよ」
「!!!!」

道徳の証拠

「おかあさん。今日はわざわざお越しいただいてすいませんね」
「いいえそれは。ところで御用はどんなことなんでしょうか」
「うちの子が何かしましたでしょうか。学級崩壊のきっかけとか・・・?」
「いえいえ。そういうことではないんです。ただ少し気になる事がありまして」
「と、いいますと?」
「この間道徳の時間で「目標とする人」というのを生徒たちに書いてもらったんです」
「ええ」
「確かに、この年でちゃんとその人の名を挙げる事ができるのはすごくいいんですが」
「うちの子、誰を書いたんですか」
「目標の人、MIBなんですよ」
「MIB?」
「黒服の男で、映画にもなっています」
「詳細は省きますがオカルト事件のときに現れるとされていて、正体がわからない人たちだそうです。印象も残らないのだとか」
「そんな人が」
「そんな人が目標なんだというんです。ちょっと気になりましてね」
「はあ」
「何か心当たりありませんか、おかあさん」
「いいえ。ただ、わたしが言うのもなんですけど、本当に手のかからない子なんですよ」
「・・・ええ」
「だから、どこにいても何をしていても心配せずに済むといいますか、気にならないといいますか」
「・・・」
「ちょっと、心当たりはありませんね」
「・・・わかりました。とりあえず本日はもう結構です」
「あ、そうだ。今日帰ったらかずひろ君に宿題をわざと忘れるのはやめなさいと言っておいてください」
「彼は定期的に宿題を忘れるんですが、どうもわざとっぽいので」
「あら。だってよ、かずひろ」
「着々!!」

ぺんぺんぐさもはえない。

太古より、富の象徴は絶える事ない水のめぐみそのものである。
その水を永遠にたたえるという聖杯のうわさは、文字が生み出される以前からあっただろう。
それほどに聖杯を求めた話、伝承は多い。
しかしその主役である英雄たちの旅路は、悪い結果ばかりだった。
帰ってこなかったのである。
実は、どこに聖杯があるのかはおおよその見当がすでについていた。
しかし誰もその存在を確認、戻ってくる事もなかったのである。
そこには悪魔がいるらしく、聖杯を守っているとか。
どうも英雄たちはその悪魔にやられてしまったのだろう。
わたし、トトはその場所に、まさに今やってきている。
聖杯を手に入れるため。
ただ正直なところ、躊躇している。
気の遠くなるような長いあいだ、聖杯を守ってきた悪魔。
聖杯を手に入れることができれば、母国の安泰は確実だ。
しかし悪魔を倒さねば、それは達成できない。
その場所は、どうみても小さい一軒家だった。
わたしは今、ちょうどその玄関前にいるのだった。
あまりに聖杯があるというには牧歌的なたたずまい。
それに感化されたのか。
わたしは無謀にもノックをしてしまった。
「どうぞ」
意外に優しい声。
悪魔は力や魔力というより、人の心につけ入る能力に長けたやつなのだろうか。
「どうぞ」
まただ。
遠慮するでもなく、しかし強制するでもなく。
絶妙だ。
「どうぞ、ちょっと自分動かれませんので」
なんか下手だ。
優位に立つ者こそ下手に出るというが、それだろうか。
おそるおそるドアを開けて中をのぞく。
一部屋しかない。
と、部屋中央の腰掛けに座る男に気づいた。
凝視する必要もなく、明らかな悪魔だった。
雄牛を思わせる角が頭から生えており、老人にも似たその顔は醜い。
悪魔である。
しかし悪魔は、さっと身構えようとするわたしを制するわけでもなく、ごめん動かれないんでと一言。
わたしに部屋に入るよう、仕草をした。
部屋のようすをより観察してみると、思いのほか整頓されている。
しかし悪魔の部屋だ。
何があるか、わかったものではない。
部屋に入ろうとしないわたしに対し、悪魔は慣例のようにこう伝えた。
「聖杯でしょう。できれば持っていってくださいよ」
「来た人みんな、なんかあーあみたいな表情で、聖杯持っていかんのよ」
聖杯という言葉を聴いて俄然勇気が出てきたわたしは部屋になだれこむ。
どこだ聖杯は!!。
「これです、僕の座ってる、これ」
「これ、水が絶え間なく出ますんよ。部屋汚れるし、ふたなくして」
「だから仕方なく座ってますの。持ってってくれるんなら助かるんですけど」
悪魔、ベルフェゴールはそう言って器用にほおづえをついた。
ウォシュレット発見の瞬間である。