傾きとしての孝雄

小学生向けの、理科の図鑑だったか。
表面張力と界面活性剤説明のくだりを、今でも思い出すことがある。

それはアメンボが沈んでいる水槽の写真だ。
「せっけん水を入れたことで溺れたアメンボ」とでも書いてあっただろうか。

あのアンガールズのどちらかのようなシルエットを見た時、もうこのアメンボは死ぬしかないのではないかと、子供ながらに心を痛めた。

それとも別の水槽に移せば、またおなじみの。
水面に浮かぶエックス、アメンボに戻れるのだろうか。
いや、アメンボがおぼれた理由は表面張力を産む、足の先の毛むくじゃらに水が浸入してしまったからのはずで、それは水槽を移しても変わらないだろう。
ああかわいそう。

しかし今となっては、足先の表面張力を奪おうが何しようが図鑑のアメンボは既に死去して久しく、かわいそうという一方で「アメンボにも、沈むくらいには体重がある」ということにいまさら気づきもしている。

アメンボは質量ゼロでも誰も文句言わないと思うのだが。
その沈むさまは、妙に律儀なものを感じさせ、こうなると「かわいそうで律儀」ってもう白虎隊しか思い浮かばず、久しぶりに堀内孝雄を聞きたくもなってくるのである。

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