ダイヤル

先日行ったバーでは、14インチの液晶テレビで何作目かの007がやっていた。
もう、何が出てくるのか全然わからない名前のカクテルを前に、暇潰した喫茶店で読んだショートショートを思い出す。
それは「ダイヤルAを回せ」という有名な小説を書いた人のらしくて、僕はそれを知らなかった。
どちらかというと、「ダイヤルMを廻せ」は聞いたことがある。
確かヒッチコックのやつで、何かスパイっぽいなと。
ゆえにバーの007も含めて、今日はスパイの日だと思った。
それにしても、祖母の家にあったダイアル式の「黒電話」である。
それにアルファベットは振られていなかった。
おそらく、スパイが盛んな地域の電話には大概振られているのであろう、AやらMが。
しかし日本の多くのダイアル式電話にはない。
「ダイヤルAを回せ!」
「ダイヤルMを廻せ!」
「さもなくば、家族がどうなってもいいのか!」
スパイ映画っぽく、恐喝まがいにこう言われたら、日本人はどうしたらいいのか。
「うちにはダイヤルのAがないんだ!。本当だよ!!」
「もちろん、Mもない!」
「どうすりゃいいんだ!」
「もう全然Aないから、それに近そうな1でいいか!?」
「Mも全然ないから、なんとなく近そうな3でいいか!?」
名作「ダイヤルAを回せ」「ダイヤルMを廻せ」における、あのスリリングな名場面が日本ではこんなに牧歌的なことになってしまうのである。
スパイが盛んでなくてよかった、日本。
もちろん、実は盛んだったとしても、それに気づかれないというのはスパイ冥利なので、どちらにせよ、よかった。
ところで「ダイヤルAを回せ」「ダイヤルMを廻せ」ってどんな話なんすかね。

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