猫を洗う

我が家にはかなり猫がいるため、彼らの汚れ具合を把握し続けることは難しい。
しかし、彼らが好きな、例えばソファの端や、座布団は、もう土なのか毛なのか、汚い。
ずいぶん昔、「みみ」と「もも」を風呂に入れたことがあったが、このときは穴という穴から全部。
何かとは言わないが出てしまった。
怖かったのだろう。
それから数日は僕に寄り付かなかったくらいだ。
そんなこともあったのだが、とにかく誰かは汚い。
それが1匹なのか全員なのかは分からないが、とにかく手ごろに見つかった2匹を洗うことにした。
【検体:きき オス】
我が家では「メスライオン」と呼ばれている、大型のイエネコだが、気が小さい。
初のお風呂では特記することもなくただ怯え、風呂の端で湯をかけられるその様は、拾われたころを思い出しているのだろうか。
【検体:ここ オス】
胴長だが大胆不敵。元気な彼をもってしても初風呂は恐ろしいらしく、ただ鳴くばかり。
濡れているのがやはり嫌なのか。タオルで拭かれても体をなめ続けるその様は、アイスキャンデーだったころを思い出しているのだろうか。
猫の風呂入れは1日2匹までである。
さもないと腰に来る。
腰をとんとんたたきながら、もうあの、お気に入りのソファだか座布団に陣取る「きき、ここ」を眺める。
こうして、ソファや座布団の汚れは少し猫に移るだろう。
ソファにも座らず座布団にあぐらをかかずに突っ立っているその様は、まだ何匹も洗うべき猫がいることを思い出している。

何かが起こりそうだよストーリー シエスタ

ヒロユキが12歳の頃、そのいとこのヨシミは、撃った拳銃の先から出ている煙を吹くんじゃなくて吸っていたっけ。
サトシはそう思った。
ヨシミの同級生のカズヒロは「マンリキは強制アッチョンブリケ装置」と思っていたし、カズヒロと苗字が同じなタカヤは、椎間板ヘルシアだったら面白かったのに、と考えていた。
体育座りをした時、足首が自分の股間をちょうど隠す姿勢と角度を探すことが趣味だったトモミはタカヤのことを知らなかったが、ヤマト運輸の運送トラック型ダンボールの窓は綺麗に切り抜いていたし、その弟のツバサはキティちゃんグッズを集め出した。
そんなツバサと未読のLINE数が同じだったハムドが空蝉の術の空蝉の方だった頃、学校の一緒だったシンジは手を使わずに大型犬用ハーネスを身につけることが、ナミはオフラインなりすましが得意だった。
ナミの祖父だと思い込んだハルゾウは「サイハイおじさんって、つまるところレフェリーのこと?」と言っていたが、その将棋友達のゲンジは、基本的に無傷だった。
ゲンジの反物質のオサヨは気の強い女性で、あと変身を2回残していたけど、それを愛おしく見ていたヘイハチは10連コンボ中だった。
この二人は二人羽織状態になっちゃって。
オサヨなんてあつあつのおでんを探していたけれど、その結果、違うのがあつあつになっていた。
その時代、ショウジは野球の審判をしていて、審判側が隠し球をやったらどうなるのだろうと思っていたが、ピッチャーをやってたトモキは、養成ギプスのつもりで亀甲縛りを嗜んでいた。
そんな僕らが、全員新宿駅を利用していることがわかりました。
よろしくお願いします。

何かが起こりそうだよストーリー
何かが起こりそうだよストーリー リターンズ
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プレイヤー

こないだどこかのニュースで「すいか割り」をしている人のことを「プレイヤー」と言っていた。
それまで全然気にしていなかった。
それは、もともと「すいか割り」という行為が嫌いだったという僕の性質もさることながら、それほど「すいか割り」に着目していなかった。
ましてやそれをしている人なんて。
そんな日常のなかで、それまではアスリートな、武井壮的な意味を持っていた「プレイヤー」は、場合によっては棒を手に、目隠しして右往左往する人も包括する、寛大な言葉に生まれ変わった。
ただ、例えばすいか割りをしているそばでビーチバレーをしている場合、「プレイヤー」ではどちらがどちらか分からない。
そんなことをこないだ飲みながら考えていたら、どうしてもすいか割り側は「ウォーターメロンブレイカー」と呼ばざるを得ない。
仕方のないことだ。
そう結論づいた。
ついでに「すいわ割り」を「スイカ割」にすると、もうモバイルCM臭がしてハンパないことが、今分かった。

笑顔

「笑顔」というのは、顔がくしゃっと複雑に、非対称的に変化する。
それが妙に魅力的だということを、誰しも経験則として知っている。
一方で、それを心の底から生み出すことは時として難しいことも知られている。
「あいつの笑顔を取り戻すため、俺は来年のことを言い続ける」
あっ、鬼は簡単みたい。