時間モザイク

最近は撮影機材の進歩も著しいのだろう。
鮮明なスロー映像がよくバラエティ番組や教育番組で流れている。
風船の破裂する瞬間や、素早い動物の映像。
もっとすごいものになると回転が分かるくらい、スローな状態で弾丸がこんにゃくみたいなものに突き刺さっていく映像など。
これらの何が面白いのかというと、やはり「いつもは早いのに、ゆっくり見える」という点だろう。
今まで早くて気づかなかった動きや細かな点など、人間の目にも認識できるくらいのスピードで見えるから。
また、ゆっくりとした動き自体が面白いというのもあるだろう。
しかし僕としてはもう一つ、面白さがあることを付け加えたい。
それは「スローになっているものに触ったらどうなるか」という好奇心をぐりぐりする疑問であり、そう思っている人も多いに違いない。
例えば前者の弾丸。
いつもの環境ならぎゅーんいってこんにゃくに突き刺さるわけだが、スロー映像では今にも触れそうだ。
目の前を流れる回転ずしよりも遅いくらいで、簡単に箸でつまめる。
もちろん、弾丸がそんなスピードで「飛行」することは、それ自体に動力がなくて難しいだろうから、それだけで非日常的で楽しい。
また、ゆっくりなこと自体もかわいくて楽しい。
ハエなんかがそのくらいのスピードでしか飛べなかったとしたら、そのトロさがかわいく見え、もっと人類と鳥類に人気が出る。
そして触ったらどうなるか。
弾丸の横っ腹をつついたら、どれほど軌道が逸れるものなのか。
こんにゃくに当たる前に指を先端に当てたら、指が破壊されるのか。
要は弾丸の持つエネルギーが、スロー状態ではどうなるのかということになる。
ゲームの世界では「敵をスロー状態にして、動きをトロくする」というのがよくあるが、実は攻撃力も下がるんじゃない?ということでもある。
さらに、「時間の流れが違うものに触れる」という、様々なSFやホラー、漫画で扱われている事象も興味深い。
特に何もジレンマに陥るようなことはないのか。
触れたところだけが、触れたものの時間の流れに相当するのか。
SFの醍醐味を考えると、「弾丸とその周囲10cmくらいだけ時間の流れが遅い」という感じのが面白い。
特殊相対性理論では「早いものは時間の流れが遅い」となっているらしいが、どういうわけか、とにかく「弾丸とその周囲10cmくらいだけ時間の流れが遅い」ということで、これでは弾丸に触れようとした右手だけにウラシマ効果が発動。
末永く手タレとして活動できて、よろしい。
クワガタムシなどの昆虫に「雌雄モザイク」という、左半分がオス、もう一方はメスみたいな、いったいどうしたんだという個体が存在する。
遺伝学的に異なる性質の細胞が両在している状態を指しているわけだが、先ほどの右手はいわば「時間モザイク」の状態と言え、例えば例の弾丸を大きくして、その上にまたがっていれば、足:20歳で足以外:50歳の時間モザイク個体が完成。
末永く足タレとして活動できて、これはもういいか。
また、そんなことを考え出すと次は「老化」というものも無視はできず、確か一部器官のみ老化が著しく進行するという病気があったはず。
もちろんそれは、時間の流れどうこうというよりも遺伝工学の世界の話だろうが、例えばその病気の特効薬が開発。
その名前が「光の弾丸」だったりすると中2っぽくてかっこよい。
ところで、難しいことは分からないが「早いものは時間の流れが遅い」ということは、相対的に「静止しているものが一番時間の流れが速い」ということでいいのだろうか。
そうなると時間の流れが、より遅くなる分には余裕がありそうだが、より早くなることは難しそうである。
時間の流れをより早くすることは、「より静止」しなくてはならないから、これは少なくとも僕には難しい。
まずは外出をやめることと、静止する旨を通知しなくてはならない。
それから冬のように布団から出なくなり、あとはもう身じろぎせず、「固くなる」ことを絶やさないくらいしかできないだろう。
トランセルか俺は。

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