CD

小学生のころ、夏休みのほとんどを祖母の住む田舎で過ごしたことがあった。
自然には事欠かない環境で、生き物の多くは机上の図鑑でしか見た事ないものだった。
飲みたくなるような色の青空、視界の半分を占めて動く海。
恐ろしいまでのインパクトを僕に与えた期間だった。
そのときの思い出は多過ぎて乱雑で、どうにもまとめられないものばかりなのだが、その中でもかなり上位に入る思い出をひとつ紹介する。
それは「祖母はジュースとしてオロナミンCを出してくる」。
僕はそれまで、オロナミンCはリポビタンDと同じようなものだと思っていた。
これは今考えても仕方ないと思う。
ビンの大きさや色が似ているし、少なくともその頃の僕はリポビタンDを飲んだ事がなかった。
そしてやはり、オロナミンCは小さい。
故に「選んで買って飲む」という機会も少なかった。
CにもDにも触れることが少なかった僕にとって、オロナミンC10本パックが冷蔵庫に入っていることは結構衝撃的だった。
そして祖母にとってジュースとは、まさにオロナミンCだった。
海から帰ってくると冷えたオロナミンC。
もちろんそのときもおいしかったし、今でもおいしい。
しかしまだわからない。
オロナミンCはジュースなのか、あるいは栄養ドリンクなのか。
夏の小学生の僕の脳裏には、おいしいと思いながらも、似ているリポビタンD、崖から落ちそうになったあとに飲む滋養強壮のあれがちらついていた。
そしていつも、もう少し多く入ってたらいいのに、と思っていた。

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