クイナ、鳴かないのか?

「鳴かぬのは」
こう問われたのは夢の話で、朝方の半分目覚めているようなときだった。
それは、なぜかヤンバルクイナを捕獲しようとしている夢。
僕が「ヤンバルクイナだ!!」と興奮しながら指差した先には、確かに小型のすばしっこい鳥類がいたが、あの赤い足が特徴的なヤンバルクイナではなさそう。
冴えない茶褐色をしている鳥だった。
しかし、なんだかヤンバルクイナじゃないなと残念がる僕を制し、班長らしき人が「たぶんメスだろう」といい、捕獲作業は継続したのだった。
その途中に問われたのだ。
「鳴かぬのは」
僕はそのとき、夢の中ながらに「このクイナのくだりの前に見た夢が、例の「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」の関係であったことを思い出した。
詳細はわからないが、とにかく「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」というフレーズが出たのだろう。
クイナの夢からも覚めた僕は、なんとなく気になっていた。
「なんだ、鳴かない理由があるはずじゃないか」
どうにも「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」の残虐な感じばかりがクローズアップされがちなのだが、確かにホトトギスにも鳴かない理由があるはずだ。
今にも絞め殺そうと、手をふるわせている男がいる。
どうにかして鳴かせようと、口笛を吹く男がいる。
こんな男がカゴの前にいては、むしろ鳴くもんかと意固地になってしまうだろう。
ひなたぼっこしている男がいる。
これはもちろん、鳴く理由がない。

5000の世界

今日も何も書かないでいいかと筆を置こうとしたとき、机の上に五千円札が置いてある事に気づいた。
やったね。
五千円というのは、助かる。
千円だとお昼2日で無くなるなと残念に思うし、一万円だとくずしたくないから使わない。
五千円は無駄遣いはしないにしてもだらだらと一週間くらい使い続けられる、ちょうどいいお札なのだ。
それにしてもお札に描かれている人というのは、ひどく「すっ」としている。
五千円札の樋口一葉は、すっとしている。
小説家なのだから、筆を持っている像とかでもよかったのに。
例の、たけくらべしてる像でもよかったのに。
「すっ」としているし。
今、すごく素直な気持ちになって、この五千円札を見てみる。
着物を着た日本髪の女性の右上に、5000。
戦闘力みたいで楽しい。
いや、ある意味戦闘力というのは正解。
千円よりも五千円の方が戦闘力高いのは疑いようのないことだろう。
となると、例えばドラゴンボールの戦闘力測るやつ。
あの測定値は絶対評価なのだろうか、相対評価なのだろうか。
というのも、あの女性の5000のことを考えると、どうも世界情勢なんちゃらが頭をよぎるから。

いとしこいし

夢路いとし・喜味こいしのお二方が既に他界されているとなると、僕の考えた「時すでに遅しこいし」はちょっと不謹慎な気もしている。
しかしこう書いてみているのは、彼らが生粋の漫才師であったこと。
そしてそれほど「時すでに遅しこいし」というのはうまく言ってない点。
なんか前の彼氏彼女のことが忘れられない事なの?と勘違いしそうな点。
その辺と、今日は他に何も思いつかないなという気持ちが合わさり、書いてみた。
亡き人のことを思い出すことが、供養になるという。
だから、さりげなく口にしていこうと思う。
「あーもう終電間に合わないじゃん。時すでに遅しこいしだよ」
怒らないでほしい。
たぶん本人がもう怒ってるあるいは「確かに遅いっちゃあ遅いけどね!!」とツッコミ入れてるから。

エルバッキーシークエンス

少なからず「と学会」の本を読んでいて、いい意味での毒気を浴びていた。
なので、PSvitaのディスガイアに「エルバッキー」という猫が登場していたことに対して、少し愛着が持てた。
そんなことを本屋で思い出したので、その日は迷わず大槻ケンヂ氏のドルバッキーを買う事にしたのだ。
最近、本屋で迷う事が多い。
たくさんありすぎて、何を買えばいいのかわからないから。
僕の親友が大槻ケンヂにはまっていた頃、僕は基本的にドラクエだった。
頭の良かった親友はその点でもおもろいやつだったわけだが、一方の僕は全力のファミコン。
言い換えればお楽しみを取っておいたとも言えよう。
ドルバッキーを読みながらコーヒーを飲んでいると、なんとなくエルバッキーはうちの猫に似ているな、と思ってきた。
正直、エルバッキーは猫なのだが、他の猫に比べても、うちの猫、ももはかなりエルバッキーに似ている。
目も光るし。
ももは捨て猫だが、やたらもこもこした毛をしており、ぱっと見「ソマリ」という高級くさい種類にそっくりである。
しかし、ここだけがおそらくエルバッキーとは違うのだが、いわゆるかぎしっぽ。
曲がり角にしっぽが引っかかり、進めないと怒っている猫がいたなら、それはももである。
僕はディスガイアのエルバッキーに、みみと名付けた。
みみはももと一緒に捨てられていた猫で、姉妹のはずなのにももとはだいぶ違う。
スローロリスのような猫だ。
しかし、ここだけがおそらくスローロリスとは違うのだが、いわゆるかぎしっぽ。
曲がり角にしっぽが引っかかり、進めないと怒っている猫がいたなら、それはみみであり、お互いのしっぽが引っかかって両者引けをとらずに怒っている猫たちがいたとするなら、それはももとみみなのだろう。
さっき違うと言ったけれども、もしかしたらエルバッキーもかぎしっぽだったんじゃないだろうか。

車掌はどちらに向いているか。

本日のディスカッション
「ジェットコースターが上手」というものについて
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中略
<黒ぶちメガネにも、モテる黒ぶちとモテない黒ぶちがある件について>
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「で、何よジェットコースターが上手って」
「なんかメモに書いてありました」
「難しいな」
「確かに」
「とにかくジェットコースターっていうのにテクニックが必要ない、というのが難しい」
「そうですね。例えば個人で操縦するものなんだったら、うまいヘタはありそうなんですけれど」
「うん。だが、ジェットコースターは自動で動く。乗っている人の技術は一見、無関係だ」
「誰かと得点を争うというものでもないし」
「まあ、普通に考えると「怖がらない」「叫び声をあげない」というのがプロ。言い換えて上手、と言えなくもないな」
「そうですね」
「例えば、それまでは背が低いんだけど、ジェットコースターに乗るタイミングで身長制限を超す身長へアップするというのはどうだろうか」
「どうだろうか、って厳かに提案されても」
「ちょっと難しいよね」
「ただ、乗る直前で体調をジェットコースターシフトできたりすると、上手とは言えそうかな」
「何ですか、ジェットコースターシフトの体調って」
「胃の四方八方にバネをつけてだな、どの方向から力が加わっても、バッファーとして衝撃を和らげてくれる」
「体調じゃなくて手術ですね」
「それに、それで上手というのなら、ジェットコースターは胃がすべて、とも言えそうです」
「こういうのはどうだろう。ジェットコースターに乗る少し前に、顔面撮影用カメラの準備をささっとできる」
「そして乗り込む時間になったら、誰の手も煩わせることなく、そのカメラをさっと装着し、速やかにジェットコースター最前列に着席する」
「自分でベルト、バーを所定の位置に設定し、スタッフの人にOKサインを出す」
「顔の表情が出やすいように、顔マッサージして、発進」
「確かにジェットコースター上手いね、その人」
「だろ」
「全然話が違うんだけどさ」
「うん」
「ジェットコースターの最前列でハンドルっぽい丸いの握ってさ」
「うん」
「あたかもジェットコースターを運転してる風にするとおもしろそうじゃない?」
「あーたしかに」
「ジェットコースターの怖さの何%かって、自分で運転できないところだと思うんだ」
「だから、自分で運転している気分になれば、少しは怖くないかもしれないじゃん」
「どちらにせよ、ジェットコースターでハンドル握ってる人ってのも」
「そりゃあジェットコースター、上手いね」

見かけの二重星

星新一のショートショートを彷彿とさせるSF漫画。
著 つばな氏
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どこか、ダイエーか何かのスーパーの本屋コーナーで平積みされているのを「見かけ」て、なんか面白そうだなと感じていた。
しかしそのとき、本屋には「おかずクッキング」を探しにきていただけなので、そちらに注力。
なんか気になる漫画があるという印象と「おかずクッキング」を得て、ダイエーを去ったのである。
僕はそれほど本を読まないから「なんか気になる本がある」というのは珍しいし、最近なかった。
そもそも「読んでみたいミステリーベスト10」などというものがあるが、あれは一体なんだろう。
「読んでみたい」わけだから「まだ読んでない」わけで、何をもって「読んでみたい」と思うのかが疑問だった。
思いつくのはまず「表紙」で、確かに最近かわいらしげなアニメ絵が表紙の文庫本も増えたなと。
そしてタイトル。
タイトルだけでこちらがひっくり返ってしまいそうな名書もあったりして、油断はできない。
この辺が「読んでみたい」と言わせるものなのだろうか。
しかし人に言わせると「著名な作家が書いたものだから、読んでみたい」というものもあるのではないか、ということだった。
なるほど。
このことが示すのはもちろんミーハー嗜好どうこうではなく、誰しも「著名でない人の本で、痛い目を見た事がある」ということである。
さて、気になる本があるなあと思いながらも、そのタイトルも著者も全然思い出せなかった。
唯一、著者が3文字だったことだけは覚えていたが、それだけではネットの世界で目的のものを探し出すのには少々足らず、見つからない。
気づくと、僕はダイエーの本屋コーナーへ向かっていたんだ・・・。
SFとしては古今関わらずよく扱われる内容らしい。
しかし、親しみやすい絵がついているだけでずいぶんと変わる。
読みやすいし、面白い表現を見せてくれる。
ショートショートを思い出させるが、ひとつのテーマを物語調により突っ込んでいるのも楽しい。
石黒正数氏の短編の雰囲気と似ているなと思ったら、なんか相識のようすだ。
僕が読む前から気になった理由は、おそらく「見かけの」という言葉だろう。
生物の授業が好きだった僕は「見かけの光合成」という、なんとも腑に落ちない言葉を覚えていた。
「見かけの?」
なんだ見かけのって。
「見かけの男前度」ってのがあったら、それはパーマの具合や背の高さ。
目が二重かどうかであって、真の男前度はそのことを差し引いて考えなくてはならないよ。
そう女学生に、教えてあげてよマイティーチャー。
今のは関係ないが、見かけの光合成能の「失われた方の曲線」。
あるいはバック・トゥ・ザ・フューチャーの何作目かでドクが黒板に書いた2本の現実。
「見かけの」という言葉を見て、片方が点で表現される線がくねくねと交わるさまが思い浮かんだ。
「見かけの光合成能の未来」
ちょっとおもろそうやないか。
それにしてもSFとミステリーの世界は、はまると出て来られないと聞くから怖い。
怖いから寝る。
すこしふしぎ。
評価:★★★★★

プリン食べたい。

夜も21時くらいを過ぎた頃、唐突に何か食べたくなる事がある。
プリン
ゼリー
クッキーの裏にチョコレートのついたもの
この辺りだ。
今、プリンが食べたくなった。
プリンには様々な種類がある。
僕が好きなやつは、とにかくカラメルが入っているもの。
ときどき、おしゃれ嗜好なのか高級嗜好なのかは分からないが、カラメル構造を持たないプリンがある。
あれはちょっとざんねんだと思う。
見た目もぬぺっとしてしまって、カラメルとの対比も望めない。
一方で、牛乳プリンやごま豆腐プリンがあり、これらは確かにカラメルは必要ない気もする。
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かわいいいたずらコーナー
・夫がセットした目覚まし時計の場所に、プリンを置いておく
・愛妻弁当の包みが濡れ、甘い香りが出てきている
・ブーツにプリンを2個、入れておく
・お子様ランチのデザートとして出てきたプリンをすぐ取り上げて食う
・朱肉と偽ってプリンを出す
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確かにカラメルは必要ない気もする。
しかも最近は様々な種類のが並んでいるものだから、もはや最良のものは複数存在するような状態なのである。
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かわいいいたずらコーナー
・「海のプリン」というコピーでイソギンチャクを市場に売り出す
・プリンを巾着で包んで絞る
・プリンを玄関先に置いて、ピンポンダッシュ
・歯磨きチューブに仕込む
・ワイングラスにプリンを入れて、「最高級のロマネ・コンティの亜種」として押し通す
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確かにカラメルは必要ない気もする。

願いは疎水性。

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2012年カレンダーの回想です。
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かつて「ポマード、ポマード、ポマード!!」は、口裂け女が怖がる呪文として小学生のあいだで広まった。
故にそれは、誰もが一度も口にしない不可聴の言葉でもあった。
しかし数年前、この呪文が幸せを呼ぶおまじないとしてコミックボンボンで紹介されてから、様々な場面でこの言葉を聞くようになる。
こんな嘘をつかずとも、この言葉は面白いので使っていきたいところだ。
「12月13日 うわーん!!。夏休みの宿題が全然終わんないよー!!。ポマード、ポマード、ポマード!!。」
たぶん、口裂け女が来て指摘してくれる。
「それの使い方、そうじゃないで」
しかし面白い。
もうケータイの電池切れそうだ!!。
ポマード、ポマード、ポマード!!。
お昼ごはんのお金、少し足りない!!。
ポマード、ポマード、ポマード!!。
動悸が治まらないのじゃ!!。
ポマード、ポマード、ポマード!!。
困ったときに口にするわりには、それ自体になんら期待していない感じがいい。
ちなみに今の「治まらないのじゃ」の「じゃ」は、どうにかして老人色を出したかったがために使用した。
どうかご容赦願いたい。

生BL巻き

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2012年カレンダーの回想です。
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11月12日。
「お前はまた生春巻きで欲情しているのか」
「えっ、そんなことないよ」
「わかるんだよ、お前は」
僕は欲情すると、油絵に腕を振るう癖がある。
トモはアトリエの僕を見て、そう言ったのだ。
「ちょっと待ってよ。なんで生春巻きなのさ」
「あ?」
「ほら、ここには生春巻き以外にもあるじゃない」
・生春巻き
・赤福
・やきそば
・車のキー
・コンパス
「どれで欲情したか、わからないじゃないか」
「お前、こんなかでったら、生春巻きがダントツじゃないか」
「そ、そうなの?」
「そりゃあそうだ」
「なんか分からないけど、自分のこと誉められたみたいでうれしい!!」
あの、生春巻きの薄皮から見える淡いみどり色。
ときどきえびの赤。
あれがどうしても油絵で表現できないんだ。
「あ、お前そんな顔して。また赤福のことで困ってんだろ?」
え、何それ。
生春巻きで欲情する事は知ってるけど、赤福のことは、僕自身分からないことだ。
「何、赤福って。ぜんぜん困ってないよ」
「分かるんだって、お前は」
「赤福の余ったあんこを使って、油絵を書きたいんだろ?」
「いいよちょうど赤福もあるし」
そうだったのか。
僕は油絵に腕を振るうと、赤福に赤褐色を求める癖がある。

おまえこわい。

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2012年カレンダーの回想です。
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10月9日 あなたの忘年会の出し物が、勝手に「カステラこわい」に決まりました。
「カステラこわい」のなかで、一言でも「紅茶が怖い」って言ったら、なぐるぞ。
先輩はこう言うと、ごつごつした握りこぶしを僕の顔に近づけてきました。
僕が所属するゼミの忘年会では、みんな出し物をする決まりがあります。
ほとんどは自己申告で出し物が決まるのですが、その会議に出られなかった者は勝手に決められてしまうのです。
僕は運悪く風邪をひいていて、決められてしまったのが「カステラこわい」でした。
僕はさっきの脅迫にすっかり肝を冷やしてしまい、もうこれはオリジナルストーリー。
主人公が最終的にカステラの角に頭をぶつけて死んでしまう話にしようと考えました。
しかしそれだけでは話として面白くありません。
話の途中、実際にカステラを頭にぶつけてみようと思いつきました。
デパートで高いカステラを買ってきて、さっそく角を頭にあててみました。
カステラは柔らかくてやさしく、僕の頭を気遣ってかのようにほろりと崩れていきます。
こんなやさしいカステラの角で死んでしまう。
ある意味こわいと言えなくはないでしょうか。
忘年会が来るまで、僕は何回もカステラを頭にぶつける練習をしました。
カステラは粉となり、僕はふけがたくさんあるように見えました。
また、糖分は髪を固まらせ、ドレッドヘアのようになりました。
そして周りの人は僕を避け、ひそひそと内緒話をするようになったのです。
僕はそれが嫌でしたが、忘年会までの辛抱です。
ついに忘年会の日がやってきました。
僕が意気揚々と教室に入ると、いきなり3人の生徒に捕まりました。
僕は暴れようにも四肢を押さえつけられて動けません。
すると、ある一人がよくわからない丸い機材を持ってきました。
そしてそれに頭を突っ込まされ、同時にスイッチが入りました。
軽いエンジン音を出しながら、風が出ているようないないような。
すると押さえつけていた一人が僕の頭をかきむしり始めました。
すると、僕の周りにモヤのようなものが発生してきました。
どうやらわたがしのようです。
どうも高いカステラを頭に当て続けていたせいか、ざらめが僕の頭の中に大量に混入していたようです。
それを知った同級生が、それ目当てにわたがし製造機を用意していたのでしょう。
僕の頭の周りのモヤは、どんどんその濃さを強めていきます。
いや、違います。
何か黒いものも混じっています。
どうやら僕の髪の毛のようです。
髪の毛がわたがしに絡めとられ、いっしょくたになっていきます。
僕は現状をほとんど理解できないまま、こう何度も叫んでいたと言います。
グレーのわたがしこわい、と。