2809年

「宇宙時間、10秒です」
師匠との戦いはまだ決着していないにも関わらず、もう観衆はひとりもいなくなってしまった。
すでに2日間、続いているからだ。
だが、動いた。
俺にとっては好転した。
布陣に穴をあけた俺は、一気に追いつめていく。
師匠も粘るが、それはもうどこまで持つか、というくらいだった。
そしてついに、俺の「飛車」が盤の枠を突き抜け、師匠の体を駆け上がっていく。
師匠は身悶えするが、その速度は変わらない。
「宇宙時間、20秒です」
「飛車」は一気に額まで上っていき、そこでくるりと「竜王」に成った。
王手。
どのくらいの時間が流れただろう。
師匠は弱々しいため息をついたあと、小さくうなずいて「見事じゃ」と言おうとする。
しかしその言葉の前に、飛車の陰に隠れていた「と金」がその口に飛び込んだ。
「ふぃほほふぁ」
勝負あり。
師匠も年を取ったもんだ。

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