かじっている。

久しぶりに紀伊国屋へ行ってきた。
新宿のそこは、何か高い所に通路がある。
あそこを一度は通りたいと思いながらも行くときはそのことを忘れ、地上から1階を目指してしまう。
そして頭上の通路を見ながら1階の漫画コーナーを通ることになる。
故あって自然科学コーナーをふらついてみると「シマリスが蛇をかじっている」という旨のタイトルの本があった。
面白そうだ。
しかし、どこかで似たようなことを聞いたことがある。
確かどこかの動物園。
爬虫類館のあるのところだ。
そこではニシキヘビにウサギを与えるのだが、とにかくニシキヘビというのは「食わない」。
一度獲物にありつけたら、1週間とかは全然食べないらしいのだ。
そんな、腹がどのへんかはよくわからないが満腹のヘビのオリに、ウサギを入れておいたらどうなるか。
下手すると、ヘビの背がどのへんかはよくわからないが、翌日背骨が見えちゃったりしているんだそうである。
シマリスの本のタイトルを見てそんな話を思い出した。
ニシキヘビはどちらかというと獲物を待ち伏せして捕らえる狩猟方法をとるらしいし、消化にも悪いから動かない。
腹がなかなか減らないのは分かるのだが、かじらせっぱなしというのはどうだろうか。
新しい物々交換のかたちだろうか。
ウサギもウサギで、捕食されてしまう身なのだとしても、かじらずにはいられない歯を持つところに生命の輝きを感じさせるが、本人は自爆スイッチのひとつだけ紛れ込んだ緩衝剤(ぷちぷち)をつぶしているような行為であることに気づいているのかどうか。
あるいは意図があってかじったのか。
よくわからない。
帰り。
試しに例の通路を通ってみることにした。
天気も良く気持ちよかったが、そんなことをやっている間にもシマリスはヘビをかじっているし、ニシキヘビは獲物を待ち伏せしている。
どこかの海や沼では、恐ろしくでかい声でクジラやワニが鳴き、なんかきれいな蝶がうちの猫のトイレに止まりミネラルを吸う。
そこにきて、高い通路の眺めだ。
困るね。