ちょっとそこまで。10

ある人は言った。
「都心と田舎を区別する一番の要素は、自転車に乗った中学生がヘルメットをかぶっているかどうかだ」
僕がこれに賛成しないのは、こないだ自宅付近でそういった中学生を見たからというわけでもなく、今適当に作ってみたことだからというわけでもなく。
もっと納得できる要素を体得しているからだ。
海岸をうろうろしてきた僕は、やっぱり海岸をデジカメ持ってうろうろしてはいけないなと思っていた。
海岸を遊んでいる人は半裸が多いから、人の目やカメラに厳しい。
と、勝手にこちらが思ってしまうため、何となく人が入らないようにファインダーをのぞく。
と、こちらの恐縮を感じてか気味が悪いのか、遊んでいる人もその遊び範囲を狭めていく。
恐縮の深化。
このままでは、最終的には僕はカメラを叩き付けるだろうし、遊んでいる人は亜空間へ行ってしまう。
結果、カメラをしまって、ただうろうろしてきただけになってしまったのだ。
まあそれはそれで楽しかったが。
宿の部屋で、そんな亜空間のことを考えているときに、それはおとずれた。
「18時になると町内放送で音楽が流れ、小中高校生の帰宅を促す。そのとき、どこかの飼い犬が遠吠えする」
これが僕の「都心と田舎を区別する一番の要素」だ。
帰宅を促すまではそうでもないが、とにかく犬の遠吠えが重要である。
田舎は外灯が少ないから、太陽が沈んだ瞬間から、常に遭難のリスクがつきまとう。
おじいちゃんがいないなと思っていたら、2階で遭難していたという話もあるくらいだ。
故の町内放送。
終わりを告げる犬の鳴き声。
小さい頃に田舎へ長期住んでいたことがある。
その風景が、そのまま田舎の記憶と紐づいたのだろう。
「ここは、田舎だ!!」
そう気づいた僕は、亜空間のことを考えるのをやめた。

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