図鑑

あるエッセイストがこんなことを書いていた。
「昔、お気に入りの魚の図鑑があった。それには魚の体長や性質とともに「おいしさ」「まずさ」が書かれていて、想像をかき立てられるのだった」
先日apple storeで購入した魚の図鑑に「かわいい」という文言を見つけ、なんとなくそれを思い出した。
かわいいかどうかは、おれがきめるから。
僕もどちらかというと、よく図鑑を見る子供だったと思う。
昆虫の図鑑はらくがきでいっぱいだし、魚の図鑑はぼろぼろだ。
海に住む無脊椎動物の図鑑は、魚のそれよりもさらにぼろぼろで、鉱物のはらくがきでいっぱいだ。
図鑑、よく見てなかった。
らくがきばっかりしていた。
動物の図鑑を見てみると、とにかく「マヌルネコ」に幼少の頃の僕はくぎづけになっていたようだ。
その図鑑の「マヌルネコ」の写真は、どうしたことか切り貼り面がよく目立ち、しかも小さい。
かなり悲惨な待遇だった。
しかし、色鉛筆で書かれた多くの丸がそれを囲んでいる。
気に入ってるのだった。
それは「マヌルネコ」という、なんとも愛らしいまるっこい名前もさることながら、写真からかろうじてわかる「すごくもこもこしている」こと、これが気に入った原因らしかった。
子供ながらに、もこもこしているものはかわいいものであることを認識していたようで、その点偉いと思う。
先日、鮮明な「マヌルネコ」の写真を見た。
もこもこしていたが、眼光鋭く「お前ちょっとよそ見たら、殺しにいくから」みたいな顔つきだった。
僕は鮮明な「マヌルネコ」が見られて満足だった。

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