いつから夜は、黒くなくなった?

美術の時間、何かのテーマを持ってポスターを作成することになった。
そのとき、僕にはとにかく夜のシーンが必要だったのである。
僕はポスターを丹念に、真っ黒に塗った。
その後、要所要所にテーマたる部品を配置。
基本的に絵のざんねんな僕だったが、それなりに満足だった。
しかし誰かが、こんな指摘をした。
「背景が真っ黒いと、ほかの部分とバランスが取りにくくない?」
「全体のイメージが重くない?」
書いているときにもなんとなく感じていたが、確かにどんよりだ。
そしてぱっとみ、幼稚な印象も受けた。それはバランスどうこうに起因したものだろうか。
ともかく、ポスター作成をやりなおし、背景を濃い青で表現してみたところ、確かに真っ黒のときよりもよくなったような気がした。
しかし、一方で僕はこんなことも考えていた。
僕にとって、夜は黒一色の世界だった。
日も沈んでいるし、一見外灯や月明かりなどで照らされているところはあるけれど。
突き詰めればそこは不可侵の世界と思っていたのだ。
それゆえ、見栄えは悪くともその時間を表現しようとするのならば、全体のイメージやバランスは気にするべきではなかった。
夜にそれらは無意味だし、無意味ということすらないはずだ、と。
ポスターがどうなったかは全く覚えていないが、この夜の印象について思ったことはよく覚えている。
今、夜を書けと言われたら僕は何色に塗るだろうか。
もし黒ではなく、紺に塗ったとしたら、それは深夜のお笑い番組とかが原因かもしれない。
もし黒ではなく、うす桃色に塗ったとしたら、それは深夜のお色気番組が原因だ。
もし黒に塗ったとしたら、それはなんら番組は関係ない、とだけ言えそうだ。

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