手袋

手袋を探しはじめて1ヶ月ほどになり、それでも気に入った手袋が見つからないというのは、それほどちゃんと探していないということである。
一般的に手袋には2種類あり、山姥が手首から先の部分だけを保存するために使用する麻袋と、冬に着用する手先を外気に触れさせないための多様な素材でできたものがそれである。
僕の探しているのは後者で、それを裏付けるかのように、僕は絶えず包丁を片手にしていることはなく、山奥の廃屋じみた一軒家に住んでもいない。
破れた障子から目だけを覗かせたりもしないし、白髪でざんばらでもなく、顔面に軽度のやけどをおっているわけでもない。
もう、ない。
別役実のまねをすることも、ない。
ということで手袋を探している。
現在ではそれについて治療法もあるとかで。
またそれによる人間関係的な悪影響についてなんて、考えること事態がナンセンスであるが。
多指症の人は、一般的な手袋をどう使用しているのだろうか。
僕が考えるに、親指と小指を除いた指のなかで、ある一組分をまとめているのではと考える。
というか、そのくらいしかない。
一方、例えば6本指の人用の手袋を5本指の人が使用したらどうなるか。
おそらく1本分の部分をはんこ入れに使用する。
8本指の人用の手袋はどうか。
これはヤツデヒトデをなんとなく彷彿とさせることで、間違いないだろう。
ちょうど1ヶ月前くらいに、そんなことを考えていたりした。
僕は手袋を探している。