虫味2

タガメという虫がいる。
かなり大きい、カメムシの仲間だ。
日本にも生息しているけど、自然にいるものはそうたやすくみつかるものではない。
僕はこの虫が小さい頃から好きだった。
えさとなる小魚などを捕らえるための、鎌のような腕が強そうだったからだ。
実物を見たことはなかった。
図鑑を見ると体長やら生息地が書いてあるけど、実感がわかない。
動いているイメージがとらえられない。
でも、この見たこともない虫の作文を書いた記憶がある。
見たことも触ったこともない虫の作文に、何を書いたのか。
今となっては不明だが、まぁそのくらい好きだった。
ところで、こいつはアジアの国々の多くでは、食材である。
結構高級らしい。
市場でキレイに陳列されている、食材としてのタガメの写真を見たときのショックは大きかった。
く、食うんや・・・。
あの強そうなイメージが消えてしまった。
かっこいいけど、食材か・・・。
また、ちょうどその頃、僕は外国産のタガメの標本を手に入れる。
ところが、それはやたらクサヤ臭を放つ物体なのであった。
もはや、強そうという印象を取り戻すことは不可能となった。
僕にとってのタガメは強くもなく、おいしくもなさそうな昆虫になったのである。

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