紫煙八景・律儀な男

こんなクイズがあった。
「5個のたばこの吸殻から、1本のたばこを作り出せる男がいます。」
「今日は25個の吸殻を手に入れることができました。」
「その日、彼は何本のたばこを作り出せるでしょうか。」
クイズというものの持つ性として、5本ではないな、と思われてしまうのはしょうがない。
そして「25個の吸殻から新たに作った5本を吸い、生じた5個の吸殻でもう1本できるから、計6本作ることが出来る。」という解答に到達するのは、さほど困難ではないと思われる。
だが、そんなことよりも「問題の男」が気にかかる。
彼は「5個の吸殻から、1本のたばこを作り出せる」技術を、自分がたばこを吸うためのみに費やしているようだ。
また、解答として「新たに作った5本を吸い、生じた5個の吸殻でもう1本」とあることから、彼の生み出す「吸殻たばこ」はほぼ新品である様子。
「たばこの吸殻から、1本のたばこを作る」という点が、なんとも男の悲哀を感じさせる。
新品同様のたばこで、何かできないだろうか。
何で新たな吸殻を生み出すために、吸っちゃうんだ、男!!。
どんだけ好きなんだ、たばこ。
だが、彼は律儀なだけなのだった。
クイズに意外性を持たせるためだけに、彼はたばこを吸い続ける。