ボンビコール

宿を後にした僕は、夜行バスに再び乗るまでの10時間ばかりをどうするか考え、まだ行ってない観光地があったので、そこでうろつくことにした。
そこも人が多い。
しかも、直線的な道の両脇に甘味処が多数あるため、さながらアメ玉を目指すアリの大行進。
僕は羽を得、蝶(蛾も可)のようにひとっ飛びしたいと思った。
でも、僕の背中には相変わらず羽はない。
それに、羽を持っていても飛べない蛾もいるしな。
変態するのも気がひけるな。
ということで思うのをやめることにした。
僕は観光客の一員として、そのフェロモンに圧倒されながらも、それを頼りにみんなが行きたがっている場所に向かった。
しかし彼らは散り散りと色んな甘味処へと消えていく。
僕がたどったのは、昔の残り香みたいなものだったのである。
歴史ある場所で残り香なんて言葉を思いつき、意識できたことはうれしかった。
・・・
それにしてもまぁ、面白くはないので自転車を借りることにする。
見てくれは「ママチャリ更年期」といった趣の自転車を借り駆る。
(ちなみにカラカルというカッチョイイねこ科がいるが、このときは圧倒的に更年期的な駆りであった)
制限2時間のうち、道に迷っていたのは1時間30分だった。
知らん街で1時間30分のサイクリング。
これをどうとらえるかは人による。
この時間を2行で終えることをどう思うかは人による。
とにかく自身も更年期的になってしまったため、僕も先人に習い甘味処へ向かうことになるのだ。
(10/14五臓七腑にしみこむピースたち)
何件目かの店を出たとき、もうずいぶんと時間が経っていたことに気付く。
今度は夕焼けが目にしみこむ。
旅も終わりだ。
夜行バスの中、僕は眠たくなるまで、あの残り香を五感で思い出すことだろう。